2022 Fiscal Year Research-status Report
糸球体毛細血管の変性・再生過程:FIB-SEMトモグラフィーを活用した解明
Project/Area Number |
22K06799
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
市村 浩一郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (10343485)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 糸球体毛細血管 / 血管新生 / 糸球体発生 / 糸球体病理 / ボリュームSEM |
Outline of Annual Research Achievements |
病態糸球体では毛細血管が病勢に応じて変性・再生を繰り返しており、これを評価することは病態を把握する上で重要なはずである。変性・再生の評価には、毛細血管網の特徴的な3D構造と断面構造を電顕解像度で同時に可視化することが理想的であるが、従来の電顕技術ではこれを行うことは難しい。このため、糸球体疾患の診断における毛細血管の病理評価は手薄になっている。本研究の目的は、従来の制約を克服した電顕イメージング技術(FIB-SEM)を活用することで、糸球体毛細血管の3D再構築と連続断面観察を行い、この毛細血管の変性・再生の形態プロセスを明らかにすることにある。 R4年度は主に発生期における糸球体毛細血管の新生過程をラットにおいて明らかにした。糸球体発生の各ステージのFIB-SEM連続断面像(50 nm厚、800枚)から、毛細血管網の3D再構築を行った。血管系の発達様式には枝分かれ型 (branching type) と嵌入型 (intussusceptive type) があるが、糸球体毛細血管がどちらの様式で形成されるかは分かっていなかったが、3D再構築解析の結果から両方の様式により糸球体毛細血管が形成されていくことを示すことができた。また、嵌入型新生が起こる場合には、メサンギウム細胞の突起が嵌入に関与することも分かった。 さらに、疾患時おける糸球体毛細血管の変性・再生過程の検討のため、ラットのメサンギウム増殖性腎炎モデル(Thy-1腎炎、GBM抗体腎炎、ハブ毒腎炎)の作製を進めており、安定的に試料をえることができるようになった。これらの試料をR5年度以降にFIB-SEM解析を進めていくことになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
糸球体毛細血管の発生過程の解析はR4、R5年度で実施する予定であったが、R4年度中に素データのほとんどを得ることができ、11個の未熟糸球体と2個の成熟糸球体について毛細血管系の構造解析(3D再構築)を完了することができた。早期にデータ取得が完了した理由は、研究協力者が効率よく解析を進めてくれたことによる。また、未熟糸球体は成熟糸球体に比べるとボリュームがかなり小さく、FIB-SEMによる撮影や3D再構築を行いやすかったことも速やかにデータが取得できた理由に挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
正常糸球体における毛細血管の形成過程の解析が想定以上に早く進んでいるため、この解析結果を基に、先天性糸球体形成異常における毛細血管異常の病理形態評価が適切に行えるようになる。そこで、先天性糸球体形成異常を生じる動物(Foxc2変異マウスなど)についても解析を行い、毛細血管形成のどのステップに異常が見られるかを検討することとした。 疾患時おける糸球体毛細血管の変性・再生過程の検討のため、ラットのメサンギウム増殖性腎炎モデル(Thy-1腎炎、GBM抗体腎炎、ハブ毒腎炎)の作製を進めており、安定的に試料をえることができるようになった。これらの試料をR5年度以降にFIB-SEM解析を進めていくことになる。
|
Causes of Carryover |
少数のサンプルで極めて効率的に解析が進んだため、R4年度に使用を予定していた大部分を使用せずに済んだ。この分はR5年度に行う糸球体毛細血管の変性・再生過程の解析のために使用するFIB-SEM装置の利用料金とすることとした。
|