2022 Fiscal Year Research-status Report
毛細血管の有窓性を調節する内皮細胞由来分泌性因子の同定とその制御機序の解明
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22K06800
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
中倉 敬 帝京大学, 医学部, 講師 (60568658)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有窓型毛細血管 / 孔 / 下垂体 / 分泌性因子 / フェネストラ / アクチン / ダイナミン |
Outline of Annual Research Achievements |
有窓型毛細血管は物質交換が盛んな内分泌器官やがん組織などに分布し、その壁には血管内外を貫く多数の「孔」が開口している。孔はホルモンなどが血管内外を出入りする際の通路として機能するが、その構築や維持に関する分子機序の全貌はいまだ不明である。そこで本研究では孔の形成および維持機構の解明を目指し、ラット下垂体有窓型内皮細胞で特徴的に発現する分泌性因子やその刺激で発生する細胞内イベントと有窓性調節の関係性について解析を進めている。 一般的に分泌性因子が細胞膜上の受容体に結合すると、細胞内でアクチン骨格系に変化が起こり、形態形成をはじめとした細胞内イベントが進むことが知られる。そこで本年度は、有窓性の調節に関わる分泌性因子の探索と並行し、アクチン骨格系と有窓性の関係性について下垂体有窓型内皮細胞培養系を用いて解析を進めた。具体的な成果としては、培養下垂体内皮細胞をアクチン重合阻害剤latrunculin Aなどで処理した際の有窓性の変化を蛍光免疫染色および走査型電子顕微鏡観察により調べた結果、latrunculin A処理により窓の数が急増することがわかった。さらに、アクチンとの相互作用が知られるダイナミン2が下垂体内皮細胞に高発現していたことから、その阻害剤dyngo-4aで下垂体内皮細胞を処理した結果、PLVAP陽性領域の増加が確認された。以上の結果から、ダイナミンとアクチンが協調的に機能し、窓の形成を抑制的に調節していることがわかった(Cell Tissue Res. 390: 441-451. 2023)。また、本成果から外部からの分泌性因子が内皮細胞内部のアクチン骨格系を制御することで有窓性の調節を担っている可能性が強く示唆されることから、今後も引き続き有窓性の調節に関わる主要分泌性因子の特定とその機能やシグナル伝達経路の解明を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、毛細血管の有窓性におけるアクチン骨格系とダイナミン2の役割を明らかにし、論文として発表することができた。また、有窓性の調節に関与する分泌性因子の絞り込みに関しても、その特定を進めるために培養下垂体内皮細胞を候補因子のリコンビナントタンパク質で刺激し、蛍光免疫染色によって孔マーカーPLVAPを可視化する実験を計画に沿って展開していることから、おおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、培養下垂体有窓型内皮細胞を用いた有窓性調節因子の特定を進める。有窓性への影響が予想される因子については、そのリコンビナントタンパク質で刺激した培養下垂体有窓型内皮細胞膜の超微細構造を走査型電子顕微鏡で観察し、孔の数量や大きさの変化を詳細に調べる。また、ターゲット因子やその受容体に対するsiRNAやウィルスベクター(もしくはプラスミドDNA)による遺伝子発現増減実験も実施し、有窓性を調節する分泌性因子であることを、実験的に証明する。
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Causes of Carryover |
進歩状況に記載のように実験計画はおおむね順調であったが、本務との兼合いで研究計画に若干の遅れが生じたため、繰越金が発生している。繰越金の使用用途としては、細胞培養用試薬(培地、培養シャーレなど)やPCR酵素類の購入に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)