2022 Fiscal Year Research-status Report
新規転移阻害タンパク質の機能解析を通した癌細胞遊走能調節の分子基盤の解明
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22K06835
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
三輪 尚史 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (40255427)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 癌細胞 / 遊走能 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度において、ダイカルシンによる癌細胞の遊走能阻害の分子基盤を解析することを目的とし、下記の成果を得た。 1. GM1b以外のダイカルシンの標的分子を同定するために、OV2944細胞抽出物を二次元電気 泳動後メンブレンにブロットし、蛍光標識ダイカルシンと反応させた。複数の標的候補分子が検出され、それらの質量分析を試みている。 2.ダイカルシンによるマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)活性への影響について解析した。ダイカルシンを細胞外から投与したOV2944細胞とコントロールOV2944細胞を調整し、泳動ゲル中にMMPの基質であるゼラチンを含んだゼラチンゲルを利用したゼラチンザイモグラフィーを行ったところ、ダイカルシン投与により、MMP2およびMMP9の活性が有意に低下することを示唆する結果を得た。 3.ダイカルシンが転移阻害作用を示す癌種を検索するために、様々な種類の細胞株を使用し、ダイカルシンの遊走能阻害効果をin vitro浸潤アッセイにより解析した。前立腺癌(PC3)および結腸癌(COLO320M)など複数の細胞株において、ダイカルシンが遊走能阻害効果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の令和元年度計画は、1.GM1b以外のダイカルシンの標的分子の同定、2.ダイカルシンのマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)活性への影響の解析、3.ダイカルシンが転移阻害作用を示す癌種の網羅的解析である。1.について、蛍光標識ダイカルシンを用いた実験により、複数の標的候補分子が検出され、それらの質量分析を試みている。また、2.について、ダイカルシンがMMP2およびMMP9の活性を低下させることを示唆する結果を得ることができた。3.については、ダイカルシンが、前立腺癌(PC3)および結腸癌(COLO320M)など複数の細胞株の遊走能を阻害することが分かった。以上より、研究の進展はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に引き続き、ダイカルシンの癌細胞の遊走能に及ぼす影響を解明する。そのために、ダイカルシンの細胞外投与による癌細胞の遺伝子発現プロファイルをさらに解析し、候補遺伝子の発現量変化ついて、Real-time PCR解析により検証する。また、ダイカルシンはマップキナーゼファミリーのうち、Erk1/の活性を阻害することを明らかにしているが、そのほかの主要なキナーゼ群(p38MAPK,Akt)への関与を検討する。本実験によって得られる成果は、ダイカルシンによる癌細胞の情報伝達調節の分子機構を明らかにすることにつながり、癌細胞の遊走能調節機構の解明において有意義な結果になる可能性が高いと考えている。
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Research Products
(3 results)