2023 Fiscal Year Research-status Report
Physiological implications of the action potential in the zebrafish fast trunk muscle.
Project/Area Number |
22K06837
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
坂田 宗平 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (40528006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Nav / 電位依存性ナトリムチャネル / 活動電位 / 筋収縮 / 興奮収縮連関 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は魚類であるゼブラフィッシュの筋、とくに速筋において活動電位の生理的意義を調べることを目的に遂行している。活動電位の発生にかかわっている電位依存性ナトリムチャネル(Nav1.4)をノックアウトした個体を作成した。一般に筋収縮には活動電位が必須と考えらえているが、驚いたことにこのNav1.4をノックアウトしたゼブラフィッシュの筋は収縮可能であり、野生型同様、遊泳可能であった。この魚の筋細胞からNav1.4に由来するイオン電流が計測されないことから、実際にこの魚はNav1.4を発現していないことを確かめた。これらのことはゼブラフィッシュの筋では活動電位がなくても収縮可能であることを示唆している。それを確かめるために、Nav1.4の阻害剤として知られているテトロドトキシン(TTX)を作用させ、野生型の魚の筋が機能するかどうか調べたところ、TTX存在下でも機能することを確認した。また個体の運動についても詳細に解析したが、野生型とNav1.4をノックアウトしたゼブラフィッシュの間で違いがないことが分かった。 ゼブラフィッシュの筋が活動電位がなくても収縮できるメカニズムを調べるために、数理シミュレーションを行った。その結果、特にゼブラフィッシュの幼魚の筋は長さが短いために膜電位の減衰がほぼ起こらず、また運動神経の興奮が伝達されて筋で生じる脱分極(終板電位)が筋が収縮できるほど十分大きいことが分かった。また成魚では運動神経との筋の連結部分(シナプス)が筋全体に散在しているため、減衰の問題が回避できている可能性がある。このように魚類と哺乳類の骨格筋の筋収縮のメカニズムは、必ずしもすべて同じではないことが推察される。本研究は生物は進化の過程でどのように筋収縮メカニズムを発達させてきたかを知る大きな一歩になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の予定どおり、Nav1.4を持たないゼブラフィッシュの解析がすすんでいるので、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼブラフィッシュの筋におけるNav1.4の役割についてはおおむね当初の目的を達しつつある。今後は、ゼブラフィッシュ以外の生物種における筋での活動電位の役割について研究を進めて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の予定ではゼブラフィッシュ以外の生物種についても筋における活動電位の重要性を調べる予定であったが、数理シミュレーションに時間を取られたため、他の生物種については調べられなかった。そのため次年度使用額が生じた。次年度以降、生物の購入費用や顕微鏡などの物品に使用する予定である。
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