2023 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアCa2+動態を起点とした神経細胞機能制御の分子機序解明
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22K06841
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
竹内 綾子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (00378704)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / カルシウム / トランスポータ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の解析から、脳では心筋と異なりミトコンドリア膜電位脱分極時においてもCa2+流入システムが存在すること、このシステムがNa+ならびにK+感受性であることを見出した。そこで、脳ミトコンドリアで観察されたK+依存性Ca2+流入がK+の移動を伴うかを、マルチモードプレートリーダーEnSpireを用いた蛍光測定により調べた。単離脳ミトコンドリアにK+感受性蛍光色素ION Potassium Green-2, AMを負荷し、細胞質K+濃度に近い136 mM K+存在あるいは非存在下で蛍光を測定した。その結果、K+存在下で強い蛍光が検出されたが、Ca2+添加による蛍光強度の変化は認められなかった。ミトコンドリアへのCa2+流入は、K+の移動を伴わずK+は膜電位など他の機構を介して間接的にCa2+流入を制御するか、あるいはK+が共輸送されてもK+濃度変化は極めて小さいと考えられた。 前年度の予備検討で確定した実験条件により、複数の心筋と脳の単離ミトコンドリアサンプルを用いて膜タンパク質群の網羅的解析を行い、サブトラクションした。MitoCarta3.0データベースを参考に、代謝、イオン動態、それ以外の機能に分けて、それぞれの臓器に特異的に発現する膜タンパク質群を得るとともに、発現パターン-機能連関を導出した。特に、脳に特異的に発現するCa2+輸送関連分子について、そのCa2+輸送特性-神経細胞機能連関のメカニズムを解析するために、培養神経細胞を用いた発現系の樹立に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光色素を用いたミトコンドリアK+の測定法に挑み、脳のミトコンドリアに特徴的なCa2+輸送の新たなメカニズム導出の糸口を得た。また、脳および心筋に特徴的に発現する膜タンパク質群について、発現パターン-機能連関を導出できたことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、令和5年度に引き続き脳に特徴的なミトコンドリアCa2+輸送特性について解析を進める。特に、K+依存性のメカニズムに焦点を当て、ミトコンドリア内の微量なK+濃度の変化を検出できるプロトコールを精査し、K+依存性 Ca2+輸送の生物物理学的特性を明らかにしていく。 脳および心筋に特徴的に発現する膜タンパク質群のサブトラクション解析から導出した発現パターン-機能連関の情報を代謝数理モデル、およびCa2+輸送数理モデルに還元し、精緻な包括的神経細胞数理モデルを完成させる。本モデル解析と培養細胞を用いたミトコンドリアCa2+輸送特性-神経細胞機能連関解析とを組み合わせ、モデル予測-実験検証を反復することによって、ミトコンドリアCa2+動態を起点とした新たな神経細胞機能制御の分子機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
培養神経細胞でのゲノム編集に供する分子の候補を絞るために、MitoCarta3.0データベースを参考にした発現パターン-機能連関の導出を先行させた。また、この情報を元に代謝・Ca2+動態関連分子の数式化に先行して着手した。このため、当初令和5年度上半期に予定していたゲノム編集培養神経細胞の樹立を令和5年度下半期~令和6年度上半期に行うこととした。それに伴い、蛍光色素・蛍光タンパク質を用いた培養神経細胞解析に必要な経費計上の一部が令和5年度から令和6年度に変更となり、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)