2022 Fiscal Year Research-status Report
延髄自律神経中枢へ投射するオキシトシン神経系の機能解明
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22K06844
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福島 章紘 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (60799782)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オキシトシン / 自律神経 / 視床下部室傍核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,延髄の自律神経制御領域へ下行性投射するオキシトシン神経系を対象として,情動にともなう自律神経反応表出におけるオキシトシン神経伝達の関与を明らかにすることを目指し,そのために(1)交感神経活動・副交感神経活動を制御する延髄内諸領域におけるオキシトシンの作用の検討,(2)各自律神経制御領域へ投射するオキシトシン神経系の覚醒下活動を観察・操作すること,を計画している. このうち(1)については,視床下部室傍核に由来するオキシトシン神経系が,熱産生交感神経活動を司る領域である延髄縫線核において促進的な作用を示すことを,国際学術誌にて発表した(Fukushima et al., Cell Reports, 2022).副交感神経系の出力部位である迷走神経背側複合体でのオキシトシン作用の検討については,麻酔ラットを用いてインビボ心血管応答を観察する系を確立した.現在,オキシトシンを微量注入して解析を進めている.また心血管系における交感神経活動を担う吻側延髄副外側野も実験対象として追加して解析を進めている. (2)オキシトシン神経系の覚醒下観察・操作について,本計画ではオキシトシンプロモーターおよびリコンビナーゼ依存的にカルシウム感受性蛍光タンパクを発現するAAVが必要となるが,現在のところ実用に足るAAVの作製の成功には至っていない.複数の血清型やプロモーター領域の調節を試みたが,さらなるプラスミド改変には技術的困難が予見されるため,代替法として遺伝子改変マウス(OXT-Creマウス)の導入した. 現在,延髄から視床下部へ逆行性にリコンビナーゼを発現させられることまでは確認できているので,来年度はカルシウム感受性蛍光タンパクの発現導入と覚醒下イメージングを進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,視床下部室傍核に由来するオキシトシン神経系の自律神経活動への作用と,その活動の観察・操作を目指している.オキシトシン作用の検討については,自律神経活動を司る領域として延髄縫線核,迷走神経背側複合体,延髄腹外側野を対象に計画しており,このうち延髄縫線核での作用については論文が掲載され,そのほかの領域についても実験系は確立できている.2,3年目に計画していたオキシトシン神経系の活動観察・操作については,ラットと逆行性AAVを用いる当初の計画から遺伝子改変マウスを用いるという方針に変更したが,AAVの発現確認などは進んでいる.以上の進捗状況に鑑み,本研究は現段階では おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
麻酔ラットの自律神経活動記録については当初の計画通り進める.オキシトシン神経系の活動観察・操作については逆行性AAVの開発は継続しつつ,遺伝子改変マウスを用いた実験系の確立を主軸に進めていく.
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Causes of Carryover |
本年度は,麻酔ラット自律神経活動におけるオキシトシン作用の検討と覚醒下ラットオキシトシン神経活動の測定系の確立を計画していた.特に,オキシトシン神経活動測定に用いる光学系を予算計上していたが,研究計画の変更に伴い購入を遅らせた.未使用額は当初の計画通り,適切な機器を選定したうえで覚醒下カルシウムイメージングに使用することを計画している.
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Research Products
(10 results)