2023 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子1α が胎生初期心臓原基の拍動開始および拍動維持に及ぼす影響の検討
Project/Area Number |
22K06846
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
當瀬 規嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80192657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 達也 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (40592473)
一瀬 信敏 札幌医科大学, 医学部, 講師 (60448610)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心拍動開始機構 / 代謝 / ミトコンドリア / HIF-1α |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では胎仔心臓の拍動開始および拍動維持に重要な役割を持つと考えらえれる、HIF-シグナル活性化を介した代謝制御機構に着目し、心拍動開始機構の解明を進めている。1年目の研究成果から、心臓原基から原始心筒への発生過程でエネルギー需要増加を賄うために、ミトコンドリア呼吸に関わるタンパク質発現が亢進することが示唆された。真核細胞のエネルギー産生を担う主要オルガネラであるミトコンドリアの機能異常が様々な心臓の発生異常と関わることが報告されている一方で、心拍動開始後の心臓原基から原始心筒形成においてミトコンドリア関連蛋白がどのように変化するかは不明である。そこで2年目の本年は、ラット胎仔から拍開始後のE10の心臓原基とE11の原始心筒を摘出し、その 組織ライセートをデータ非依存性質量解析(DIA-MS)に供与し、2群間で1.5倍以上発現が変化した蛋白質を同定した。発現変化した蛋白質を網羅的に解析し、その中で代謝やミトコンドリアに関わる蛋白質の発現と機能を評価した。原始心筒で発現増加した蛋白質について、遺伝子オントロジー解析による生物学的プロセスの上位3つは、順に、「エネルギー代謝」、「酸化によるエネルギー」、「循環系発生」であり、エンリッチメント解析では「クエン酸回路」が最も関連する経路に選出された。従って、ラット胚の心臓原基から原始心筒形成過程において、ミトコンドリア機能に関わる蛋白発現が増加していた。また、アップストリーム解析では、これら蛋白発現の変化を説明する経路として「IGF-2」と「IGF-1」が上位に選出された。IGFを介したシグナルは、胎仔の心臓発生において、ミトコンドリア生合成や機能を制御する重要な因子である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心拍動開始期にミトコンドリア機能関連蛋白質の発現が増加していることを明らかにしたことと、心拍動開始にIGFシグナルがミトコンドリア機能を調節する重要な因子であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね予定通りに進んでいる、今後は心拍動開始期の代謝機構の制御やATP賛成に関わる酸素消費、また心筋収縮装置の構成について解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は心拍動開始期のラット胎仔心筋のデータ非依存性質量解析(DIA-MS)によるタンパク質発現解析に注力したため。
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