2023 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍血管新生におけるアミノ酸輸送体LAT1とVEGF-Aの協調的機能の解明
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22K06856
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大垣 隆一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20467525)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アミノ酸トランスポーター / 腫瘍血管新生 / 細胞内シグナル伝達 / VEGF-A / 血管新生阻害療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がんの新規治療標的として注目されているアミノ酸トランスポーターLAT1と血管新生因子VEGF-Aが、腫瘍血管新生において協働する分子機構を解明し、両者に対する阻害薬の併用によって、血管新生阻害作用の増強に依拠した高い抗腫瘍効果の実現を試みるものである。令和5年度は、マイクロアレイを用いた血管新生関連サイトカインの網羅的解析を実施した結果として、がん細胞をLAT1阻害薬で処理した際、VEGF-A以外にも数種類の血管新生促進因子の培地中への分泌が顕著に抑制されることを見出した。これらの血管新生促進因子は、VEGF-Aと共に血管内皮細胞におけるLAT1の発現誘導に関与している可能性がある。また、LAT1阻害薬が示すこれらの血管新生促進因子の抑制は、同阻害薬の抗血管新生作用に寄与している可能性があるため、今後、病態形成における意義を詳細に検討していく価値があるものと考えられる。またこの知見は、必須アミノ酸の供給を通じてがん細胞のタンパク質合成を支えているLAT1が、血管新生促進因子の分泌に寄与することで、腫瘍微小環境の形成にも広範に関与していることを示唆しており、LAT1阻害薬の抗腫瘍効果の機序の全容解明においても重要な意義を有している。今後、腫瘍血管内皮細胞初代培養を対象として、VEGF-A刺激による血管内皮細胞LAT1の発現誘導の分子機構、がん細胞由来のVEGF-Aによる血管内皮細胞LAT1の発現誘導についても検討し、さらに、LAT1阻害薬と血管新生阻害薬の併用効果をin vivoで示すことで、がん微小環境下のLAT1とVEGF-Aの協調的機能の阻害によって血管新生阻害作用が増強されることを実証できるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度に実施したヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いた解析により、VEGF-Aによる血管内皮細胞LAT1の発現誘導におけるErk1/2とc-Mycの重要な寄与を明らかにした。令和5年度は、HUVECを用いて明らかにしたこれらの知見を、より実際の腫瘍内血管内皮細胞に近い性質を持つと考えられる、腫瘍血管内皮細胞初代培養で確認することを試みた。しかしながら、解析実施に充分な量と質の初代培養を安定的に調製する手法が確立できず、大きな進展は得られなかった。がん細胞由来VEGF-Aによる血管内皮細胞LAT1の発現誘導の可能性については、令和4年度の検討で、通常培養条件下(21% O2)でのがん細胞の培養ではVEGF-A分泌量がかなり低いことを見出していた。そこで、がん細胞を低酸素条件下(1% O2)で培養したところ、条件培地中のVEGF-A量の大幅な増加が確認された。令和5年度は、がん細胞を同条件下で培養した際の条件培地を用いてHUVECを刺激する検討を再度実施した。しかし、複数の大腸がん細胞株を用いた検討の結果、有意かつ顕著なLAT1の発現誘導は検出できなかった。今後は、大腸がん細胞株由来のVEGF-Aの量が依然として不充分である可能性や、大腸がん細胞株から分泌される他の因子がVEGF-A依存的なLAT1の発現誘導を抑制している可能性などを考慮していく必要がある。一方で、血管新生関連サイトカインマイクロアレイを用いた網羅的解析の結果、がん細胞をLAT1阻害薬で処理した際に、VEGF-A以外にも特定の数種類の血管新生促進因子の発現が抑制されることを見出した。これらの血管新生促進因子は、血管内皮細胞におけるLAT1の発現誘導に関与している可能性がある。また、同血管新生促進因子群の分泌抑制が、様々な機序を介してLAT1阻害薬が示す抗血管新生作用に寄与することも検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
がん細胞由来VEGF-Aによる血管内皮細胞LAT1の発現誘導の可能性について、現時点でこれを支持する結果が得られていない。組換えVEGF-Aによる刺激では明瞭かつ再現性の高い結果が得られているため、大腸がん細胞株由来のVEGF-A量をさらに増加させる培養条件について検討する他、大腸がん細胞株から分泌される他の因子がVEGF-A依存的なLAT1の発現誘導に抑制的に作用している可能性などを考慮して、他のがん種由来の細胞株での検討も実施する。また、令和5年度には、腫瘍血管内皮細胞初代培養を樹立する手法が確立できず、血管内皮細胞におけるVEGF-A依存的なLAT1の発現誘導のメカニズムの検証には至らなかった。令和6年度は、ゼノグラフト腫瘍作製に用いるがん細胞株の変更を検討し、引き続き腫瘍血管内皮細胞初代培養の樹立に取り組む。VEGF-A産生に対するがん細胞LAT1の寄与については、がん細胞をLAT1阻害薬で処理した際に、VEGF-A以外にも特定の数種類の血管新生促進因子の発現が抑制されることを見出した。これらの血管新生関連サイトカインが、VEGF-Aとともに血管内皮細胞におけるLAT1の発現に関与している可能性に加えて、LAT1阻害薬が示す抗血管新生作用にも寄与している可能性を検討していく。また、令和6年度が本研究の最終年度となるため、上記のin vitroでの作用機序の検証を早期に完了させるとともに、LAT1阻害薬と血管新生阻害薬のin vivo併用実験を実施し、がん微小環境下のLAT1とVEGF-Aの協調的機能を阻害することで血管新生阻害作用の増強が得られることを実証する。
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Causes of Carryover |
腫瘍血管内皮細胞初代培養を安定的に調製する手法が確立できなかったため、同初代培養を用いての実施を予定していた、VEGF-A依存的なLAT1の発現誘導の機序解明や、VEGF-A産生を介した血管内皮細胞LAT1の発現誘導に関する検討に遅れが生じた。また、ヌードマウス皮下に大腸がん細胞株を移植したゼノグラフト腫瘍に対して、LAT1阻害薬と抗VEGF-A抗体ベバシズマブを共投与するin vivo併用実験も着手には至らなかった。以上の理由により、血管内皮細胞の単離に用いるキット類、ベバシズマブ、血管内皮細胞専用培地、動物実験関連の消耗品など、比較的高額な消耗品の購入に充てることを想定していた予算が順当に消化されず、次年度への繰り越しが生じた。令和6年度には、腫瘍血管内皮細胞初代培養の樹立方法を確立させて実験条件の最適化をおこなったのち、繰り越し金を上記の各解析の実施に充てることを予定している。
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Research Products
(14 results)