2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of neural and molecular basis underlying antidepressant effect of serotonergic psychedelics
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22K06872
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
衣斐 大祐 名城大学, 薬学部, 准教授 (40757514)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シロシビン / サイケデリックス / うつ病 / セロトニン5-HT2A受容体 / シロシン / 幻覚薬 / マジックマッシュルーム / 抗うつ薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
マジックマッシュルームの幻覚成分「シロシビン」が難治性うつ病に対し、治療効果を示すことから、米国FDAは、シロシビンを難治性うつ病の革新的治療薬になると発表した。現在、シロシビンの抗うつ作用に関する臨床試験として、米国では第3相試験が行われている。世界中でシロシビンのうつ病治療における臨床使用の試みが始まっている。しかしながら、その作用機序は未だ不明である。 我々はこれまでにもマウスにトリプタミン系幻覚薬のシロシン(シロシビンの活性代謝物)やフェネチルアミン系幻覚薬のDOIやTCB-2を投与し、24時間後に抗うつ様行動を調べるために強制水泳試験(FST)、尾懸垂試験(TST)を行ったところ、シロシン、DOI、TCB-2すべてのサイケデリックス(現アック薬)において両試験での無動時間の短縮(≒抗うつ様作用)が認められた。また、これらサイケデリックスで認められたFSTとTSTの無動時間の短縮作用はいずれもセロトニン5-HT2A受容体(5-HT2A)アンタゴニストのボリナンセリンの前処置によって拮抗された。次に、サイケデリックス投与による幻覚様行動について調べたところ、シロシン、DOI、TCB-2投与24時間後のマウスにおいて幻覚様行動は認められなかった。さらにこれらサイケデリックス投与24時間後に自発的運動量を調べたが、溶媒処置コントロール群と差は認められなかった。以上から、これらサイケデリックスで認められたFSTやTSTの無動時間短縮作用は幻覚様行動や運動量による影響を受けずに、5-HT2A刺激を介して出現していることが分かった。これらの研究は、2023年にNaunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol誌に受理された。現在はサイケデリックスの5-HT2Aを介した抗うつ作用に関する神経基盤を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の流行による大学への入構や輸入等の制限が緩和され、以前より研究活動の自由度が増したため「おおむね順調に進んでいる」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はシロシビンの抗うつ作用に関わる脳領域さらに神経回路を同定していきたい。既に我々は5-HT2Aが大脳皮質、扁桃体および外側中隔核に豊富に発現していることを明らかにしている。これまでの報告から、外側中隔核がストレス応答行動や抗うつ作用に関わっていることが分かっている。そこで我々はこれまでにマウスの外側中隔核の5-HT2Aを薬理学的または遺伝学的に抑制したうえでシロシンとDOIの抗うつ様作用を調べたところ、シロシンやDOIによる抗うつ様作用は認められなかった。この結果は、外側中隔核の5-HT2Aがサイケデリックスの抗うつ作用における責任脳部位であることを示唆している。今後は外側中隔核の5-HT2A発現神経細胞の活動とサイケデリックスの抗うつ様作用を調べていきたい。さらに、外側中隔核の5-HT2A発現神経細胞の投射先などを明らかにし、サイケデリックスの抗うつ作用に関わる神経回路を同定し、その機能を明らかにすることでサイケデリックスによる抗うつ作用に関わる神経基盤の全容を明らかにする。
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Causes of Carryover |
為替等の影響で費用がかさむことが予想されたため、購入を見送り既存の設備・機器を工夫して使用することで、何とかやりくりした。
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