2023 Fiscal Year Research-status Report
Ras変異体が誘導する新規細胞遊走シグナルの分子基盤とがん悪性化への影響の解明
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22K06903
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
太田 聡 自治医科大学, 医学部, 講師 (40528428)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Ras / MerTK / STK38 / IL-33 / 細胞遊走 / がん悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ras遺伝子の変異は様々ながんの原因であり、Rasシグナル経路は新規抗がん剤の有力な標的となっている。しかしながら、既知のRasおよびRasシグナルを標的とした抗がん剤を使用した治療では、がん細胞が抵抗性を示し、Rasシグナルを完全に抑えることはできていない。申請者らはがん化型Ras変異体がIL-33依存的に受容体型チロシンキナーゼMerTKの発現を誘導して細胞遊走を亢進させることを報告した。さらに、プロテオミクス解析を行い、MerTK結合タンパク質としてSTK38とARHGAP18を同定した。本課題は、STK38とARHGAP18に焦点をあて、新規RasシグナルであるRas/IL-33/MerTK経路による細胞遊走亢進の分子機構を解明することを目的とし、本年度はセリン・トレオニンキナーゼであるSTK38のRasシグナルに対する影響を検討した。免疫沈降実験から細胞内においてMerTKとSTK38が相互作用することが確認された。また、ボイデンチャンバー法による細胞遊走実験から、Rasによる細胞遊走亢進がSTK38の発現抑制により抑制されることが明らかとなった。さらに、STK38のキナーゼ活性はRasによる細胞遊走亢進とMerTKの活性化を示すチロシンリン酸化に必要であることが示された。細胞運動促進因子Rac1とCdc42のpull-downアッセイを行ったところ、STK38の発現抑制により活性型Rac1およびCdc42が減少した。以上のことから、STK38は、MerTKのチロシンリン酸化を促進することで、Rac1とCdc42の活性化を介したRas/IL-33/MerTK経路が誘導する細胞遊走を促進すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、計画通りSTK38のRas/IL-33/MerTK経路に対する影響と作用機序の解析が進行しており、全体の計画はおおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の計画をもとに、STK38のMerTK活性化と発がん・転移能に対する影響を明らかにして行く。セリン・トレオニンキナーゼであるSTK38が直接MerTKをリン酸化するか確認するため、in vitroキナーゼ解析法で検討する。また、in vivo におけるMerTKとSTK38のRasによる発がんに対する影響を確認するため、それぞれの発現を抑制し、Ras (G12V)を発現させた細胞をヌードマウスに皮下移植して腫瘍の形成能への影響を明らかにする。さらに、浸潤・転移能に対する影響を調べるため、同じ細胞にルシフェラーゼ発現ベクターを導入し、その細胞をマウスに尾静脈移植したあとin vivo 発光イメージング解析により浸潤・転移した細胞を検出する。ARHGAP18については、解析に利用できるARHGAP18に対する抗体が得られていないが、市販の抗体で得られない場合は抗体の作製を試みる。
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Causes of Carryover |
購入予定であったRas、MerTK、STK38に対する抗体の購入を見送ったため、次年度に持ち越す予算が生じた。次年度にこれらの抗体を購入する予定である。
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