2023 Fiscal Year Research-status Report
長鎖非コードRNAによるTLS相分離を介した新規の転写制御機構の解明
Project/Area Number |
22K06904
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
黒川 理樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70170107)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 長鎖非コードRNA / TLS / FUS / 相分離 / ALS / 天然変性領域 / IDR / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の核心をなす問いは、「lncRNAはTLSの相分離に作用し転写を制御するのか」である。これに答えるために目的を設定した。目的は、相分離により形成される液滴に作用して転写を抑制するlncRNAを見いだすことである。これにより、新規の転写抑制機構を示すことになる。この目的を達成するために、2022年度はTLSに結合するlncRNAの検出法の確立を目指した。具体的には、GST-TLSにヒトHeLa細胞総RNAを結合させ、lncRNAを検出する方法を確立した。まず、大腸菌発現のGST-TLSを調製して、HeLa細胞総RNAを結合させた。結合RNA画分からTLS結合RNAを調製した。このTLS結合RNAから相補的なCyanine3標識のcRNAを合成し、ヒトlncRNAマイクロアレイにハイブリダイゼーションさせた。シグナル強度を測定し出発物質であるHeLa細胞総RNAから、精製されたGST-TLS結合RNAの中でシグナルが2倍以上に上昇したRNA配列を目的のlncRNAとした。この解析で1700種類以上のlncRNAが見いだされた。これらの配列で、10倍以上増加したRNAが50件ほど、20倍以上が10件以上となった。この中から、6種類のlncRNAを次の解析に用いた。2023年度は、これらのlncRNAが実際にTLSに結合し、相分離制御作用を有するかを検証した。具体的には、GST-TLS試料を遠心して相分離・沈殿形成を誘導する実験系を確立した。このGST-TLS沈殿系に新規に同定したTLS結合性lncRNA6種類を添加して、相分離・沈殿形成の抑制効果を検出した。その結果、6種類のlncRNA(lncRNA1‐lncRNA6)すべてに、沈殿抑制効果が検出された。これが本年度の成果である。この成果をもとに、相分離に作用して転写を抑制する新規のlncRNAを探索していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、Ⅰ.TLSに結合するlncRNAの検出法の確立、Ⅱ.TLSに結合するlncRNAの検証,Ⅲ.目的のlncRNAを選択する実験法の確立とTLS結合性・相分離抑制性・転写抑制性のlncRNAの同定、以上3項目を3年間で実行する実験計画を作成した。これまでに、Ⅰ、ⅡとⅢのTLS結合性・相分離抑制性のlncRNAの同定を達成したので、順調に進展していると認識される。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、初年度で得られたRNA配列がTLSに結合することを検証した。シグナルが20倍以上に上昇したlncRNA配列からビオチン標識RNAオリゴを合成、実際にTLSと結合することを確認した。現在までに上位6種類のRNA配列について、GST-TLSへの結合とHeLa細胞核抽出液(NE) 中のTLSとの結合が確認された。これらすべてのlncRNAに、TLSの相分離・沈殿形成を抑制する活性を見出した。この成果を受けて、HeLa細胞のcyclin D1プロモータールシフェラーゼ転写系を用いて、転写抑制作用を検出する。これは、si-lncRNAで、lncRNA発現を抑制して転写抑制を解除するリポーター系なので、よりシンプルに、lncRNA添加によりルシフェラーゼ活性を抑制できる実験系の構成も試みたい。大変チャレンジングな実験計画である。
|
Causes of Carryover |
研究費の有効利用と、実験過程の効率化を追求した成果として、研究費に余裕が生じた。来年度に繰り越しになる研究費も研究課題の効率的な遂行に適切に用いていく。
|