2023 Fiscal Year Research-status Report
癌の転移・再発における細胞外Galectin-Xを介した免疫抑制機構の解明
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22K06907
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
安 健博 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (40723771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久場 敬司 秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10451915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 扁平上皮癌 / G-CSF / MDSCs |
Outline of Annual Research Achievements |
今まで研究から、NRS1Mマウス扁平上皮癌腫瘍巣において、免疫抑制環境にて高発現するGalectin-7は、特異的に癌細胞の転移に寄与することを報告した。Galectin-7は免疫細胞のアポトーシスを誘導することや、腫瘍促進作用を持つ骨髄由来抑制細胞(MDSCs)の分化・活性化に関わることが報告されている。NRS1M移植マウスにおいて、Galectin-7の発現上昇に伴い腫瘍内および末梢血中のMDSCsの割合が顕著に上昇していたにもかかわらず、リコンビナントタンパクを用いた実験では、Galectin-7によるMDSCsの機能制御は見られなかった。一方、MDSCsの活性化において重要な役割を持つことが知られているgranulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)が、NRS1M腫瘍悪性化過程にて発現が上昇していることを見出した。G-CSFが欠損したNRS1M細胞を移植したマウスではMDSCsの割合が有意に低下しており、またコントロール群に比べ腫瘍の進行が顕著に抑えられていた。これらの結果から、G-CSFはMDSCsの活性化を介した扁平上皮癌の増悪因子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G-CSFは様々ながんにおいて予後不良、再発などと関連する増悪因子であることが報告されているが、食道扁平上皮癌におけるG-CSFの役割については不明な点が残されている。食道扁平上皮癌の臨床検体より作成した組織マイクロアレイを用いてG-CSFの免疫染色を行った結果、G-CSF高発現群は低発現群よりも5年全生存期間が短く、単変量解析および多変量解析ではG-CSFは食道扁平上皮癌の独立した予後不良因子であった。一方CRISPR-Cas9システムを用いてG-CSFノックアウトNRS1M細胞を作成し、当細胞では増殖能が低下していること、またG-CSFノックアウトNRS1M細胞を移植したマウスでは、腫瘍の進行が抑制され、リンパ節転移や肺転移した個体の割合が少ないことが分かった。さらにG-CSFノックアウトNRS1M細胞を移植したマウスでは、末梢血中の好中球が有意に減少しており、対照的にCD8陽性T細胞の割合が増加していた。最後に好中球の中和抗体を用いた実験を行い、中和抗体投与群では腫瘍の進行が抑制され、末梢血中のCD8陽性T細胞が増加していた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、扁平上皮癌から産生されるG-CSFは、癌細胞の増殖能を高め、また抗腫瘍免疫を負に制御するという2つの生理活性により癌の進行を促進することが示唆された。食道扁平上皮癌においてG-CSF高発現は予後不良であり、これまでの治療法に加え、G-CSFまたは好中球を標的とした治療法の開発が期待される。 近年、腫瘍細胞におけるインターフェロンシグナルの低下は、がんの進行・転移につながることが報告されている。NRS1M悪性細胞株ではインターフェロン及び炎症応答に関連する遺伝子群の発現が低下しており、具体的には炎症性サイトカインTNFa、IFNb、IFNgの細胞応答が有意に低下していることを見出した。今後の研究として、多彩な生理的機能をもつこれらサイトカインが、ヒト食道扁平上皮癌細胞に果たしてどのような影響をもたらすかについて検討する。実際これまでの予備検討から、TNFa、IFNb、IFNgの共刺激は特異的細胞機能を制御することが示唆され、つまり三者シグナルの同時活性化は、食道扁平上皮癌の進行、とりわけ癌の悪性化を制御する重要な機構であることが考えられ、当メカニズムの解明から新たな予防法・治療法の開発につなぐことを目指す。
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Causes of Carryover |
本研究内容に関わる動物実験を次年度に予定しており、未使用額を次年度の経費と合わせて必要匹数を購入し実行する予定である。
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Research Products
(2 results)