2023 Fiscal Year Research-status Report
Targeting integrin signaling for the treatment of COVID-19
Project/Area Number |
22K06910
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 英嗣 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (20577415)
朴 恩正 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (20644587)
高娃 阿栄 三重大学, 医学系研究科, 助教 (50643805)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | インテグリン / 新型コロナウイルス / シグナル伝達 / 自然免疫 / 単球 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
インテグリンは細胞接着分子のファミリーであり、αサブユニットとβサブユニットが非共有結合をした二量体構造を成す。人やマウスでは24種類のインテグリンが存在し、すべての細胞が少なくとも1種類以上のインテグリンを発現する。我々は、肺胞上皮細胞の表面に発言するβ1インテグリンが新型コロナウイルスのスパイク1(S1)タンパク質と結合することを発見した。また他のグループからインテグリン阻害剤を用いた感染阻止の研究結果が発表されたことを踏まえて、インテグリンがウイルスの細胞侵入にACE2と協調して感染を促す可能性を提示してきた。また、このS1の結合は、上皮系細胞だけでなく、免疫系細胞においても、インテグリンが関わることを明らかにした。新型コロナウイルスは免疫系を過剰に活性化し重症急性肺障害を誘導する一方、免疫系を抑制し免疫系によるウイルス排除から逃れることもわかってきた。そこで新型コロナウイルスと自然免疫系との相互作用を、構造タンパク質に焦点を当て研究する。 インテグリンはリガンド結合時に細胞内シグナル伝達経路の活性化においてFocal Adhesion Kinase(FAK)のリン酸化がその中心的な役割を果たす。本研究課題では、新型コロナウイルスのS1タンパク質が、インテグリン結合を通じてFAKリン酸化を引き起こすことを、単球を用いて、新型コロナウイルスのタンパク質のインテグリンへの結合可能性を仮説として検討する。本研究で使用したタンパク質は、新型コロナウイルスのS1タンパク質またはORF7aタンパク質であり、S1タンパク質とORF7aタンパク質で単球を処理した。その結果、FAKのリン酸化を誘導することが分かった。インテグリン抗体を前処理してから、S1タンパク質を処理しFAKリン酸化の分析を試みた。その結果、インテグリンを阻害した場合、FAKリン酸化が有意に抑制されることが示唆された
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、1)単球(THP1細胞)と新型コロナウイルスS1タンパク質がβ1インテグリン、特にVLA-4インテグリンを介して相互作用することを明らかにしており、2)このTHP1細胞がβ1とβ2インテグリンの双方を同時に発現していること、3)新型コロナウイルスS1タンパク質とTHP1細胞との結合によりFAKというインテグリンシグナルに重要なアダプターキナーゼのリン酸化が誘導されるが、β2インテグリン阻害抗体の前処理によりFAKリン酸化つまり活性化が阻害されることを確認してきた。この結果より、新型コロナウイルスS1タンパク質はTHP1細胞のβ1とβ2インテグリンの双方に結合出来るが、FAKリン酸化においてはβ2インテグリンへの依存性がより高いと予測された。さらに、新型コロナウイルスのアクセサリータンパク質の1種であるOpen Reading Frame 7a(ORF7a)のFc融合の組み換え型タンパク質(R&D社製)とTHP1細胞を用いてインテグリンへの結合可能性を検討中している。ORF7aはβ2インテグリン(LFA-1やMac-1)の主要リガンドICAM-1と構造的に強い相同性を持ち、シミュレーションによりβ2インテグリンと結合する可能性があると予測される。ORF7aがβ2インテグリンに結合し、単球・マクロファージの機能変動にどのような影響を与えるのかを明らかにすることは、病態形成を考える上で非常に重要である。予備実験ではORF7aによりTHP1細胞にFAKリン酸化が誘導された。新型コロナウイルスのS1タンパク質とORF7aタンパク質が、インテグリンを介して単球・マクロファージの免疫反応をいかに変化させるかの解明に向けての科学的基盤のひとつを提供した点で有意義であると考えられる
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究において、新型コロナウイルスS1タンパク質とORF7aタンパク質が、インテグリンへ結合することの特異性の検証と、S1タンパク質とORF7aタンパク質がインテグリンを介したFAKリン酸化を誘導していることの特異性を厳密に検証する。インテグリン機能阻害抗体にはインタクトなIgG分子を使用しているので、単球のFc受容体を介したIgGによる非特異的なFAKシグナルの修飾を注意深く検証する。また単球に発現する第3のインテグリンとして、ビトロネクチン受容体であるαVインテグリンの関与についても検討を考慮する。 FAK以外にも新型コロナウイルスS1タンパク質とORF7aタンパク質のインテグリンを介して誘導されるシグナルとそのクロストークを研究する。インテグリンは複数のシグナル経路を活性化することができ、特に、β1とβ2インテグリンを介してFAKとSpleen Tyrosine Kinase (SyK)の活性化に焦点を当てて検討する予定である。例えば、FAK活性化はNF-kBやMAPKを活性化し、主として細胞の活性化を促進する影響を与える。SyKの活性化はSTAT1やITAMを経由した活性化シグナルにつながる一方、MyD88を経由したTLRのシグナル抑制経路が存在する。このように新型コロナウイルスS1タンパク質やORF7aタンパク質がインテグリン結合によりFAK活性化シグナルとSyK活性化/抑制性シグナルという、2つのシグナルのクロストークが単球・マクロファージ機能に与える影響を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)解析に使用するサンプル数が当初の予定よりも少なくて済んだため (使用計画)発展的な研究のためのサンプルの解析等に使用する予定である
|