2022 Fiscal Year Research-status Report
MHCクラスI抗原提示の機能不全が惹起する脳内セロトニン過剰疾患「不安障害」
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22K06914
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 准教授 (90455345)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アミノペプチダーゼ / 不安障害 / MHCクラスI抗原提示 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
ERAP1遺伝子欠損マウスは不安行動を頻出させる。本年度は、セロトニン神経株RN46A株を用いてERAP1遺伝子欠損株を新たに作製し、本遺伝子の神経機能に関する影響を解析した。その結果、同遺伝子欠損は、個体レベルで認められたようにセロトニン神経株のセロトニン合成酵素転写抑制因子の発現を低下させることで、セロトニン合成遺伝子の発現量を増加させた。また、同遺伝子欠損は、RN46A株の神経突起の伸長や剪定を阻害するような効果が得られた。ERAP1遺伝子欠損マウスの脳内では、セロトニン合成領域では過剰なセロトニンが産生され、一方でセロトニン神経の投射先ではセロトニンが減少していることを確認している。したがって、脳内では、ERAP1がセロトニン発現と輸送の両方を調節していることになる。一方で、ERAP1は末梢(腸管)のセロトニン合成酵素の発現には影響を及ぼさないことも明らかにした。 近年、ERAP1も関わる抗原提示過程が神経の可塑的変化に影響を及ぼすことが明らかになりつつある。そこで現在、マウス神経芽腫株Neuro2aおよびRN46A株においてMHCクラスIa分子のノックアウト株を作製中で、これらを用いて抗原提示過程とセロトニン合成酵素発現量や神経突起形成への影響を解析していく予定である。 また、セロトニン受容体阻害剤を服用させたマウスに対し、社会性と社会新規性に関する行動解析(3チャンバー試験)を実施し、これらがセロトニン阻害によって改善される結果を得つつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHCクラスIa分子欠損株の作製に手間取っているが、セロトニン神経株を用いた解析が順調に進んだ。また、ERAP1遺伝子欠損マウスの不安行動(社会性、社会新規性)に対してセロトニンの影響を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ERAP1遺伝子欠損した神経細胞株を作製し、それらのセロトニン合成酵素やその転写因子発現量を明らかにする。また、神経突起形成への影響も観察する。さらに、MHCクラスI分子の受容体として機能しうるCD3やPir、KIRLの遺伝子欠損株を作製し、セロトニン代謝に関わるセロトニン神経のMHCクラスI分子受容体を同定する。これらの実験で、抗原提示過程がセロトニンの代謝・輸送に関与する分子機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度予定していたMHCクラスI分子欠損細胞の培養の未実施や試薬購入価格の低下などによって当該助成金が生じた。次年度に上記細胞を培養する培養液(RPMI1640やDMEM)を購入する。
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