2023 Fiscal Year Research-status Report
心臓線維芽細胞におけるドキソルビシンの心毒性メカニズムの解析
Project/Area Number |
22K06928
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
梅村 将就 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (50595353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永迫 茜 横浜市立大学, 医学部, 助手 (70902675)
中鍛治 里奈 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80845511)
長尾 景充 横浜市立大学, 医学部, 助手 (40903654)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 心臓線維芽細胞 / ドキソルビシン / Orai1 / 心毒性 / p53 / p21 / EP4 / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は先行研究により、ドキソルビシン(DOX)が持つ心毒性により引き起こされる心臓機能障害に、カルシウム(Ca2+)シグナル、とりわけストア作動性Ca2+流入機構 (Store-operated calcium entry:SOCE)が介している可能性を見出した。そのため、本研究では心臓線維芽細胞において、ドキソルビシンが持つ心毒性のCa2+を介した新たな機序を解明し、ドキソルビシンを起因とする心不全の診断・治療に役立てることを目的とし、研究を行った。アントラサイクリン系抗癌剤の1つであるドキソルビシンは、現在の化学療法レジメンにおいて非常に重要であるが、不可逆的な心機能障害を起こすリスクが問題視されている。ドキソルビシンによる心不全は、一度発症するとその予後は非常に不良であるにも関わらず、未だ治療法が確立していない。過去に様々な研究が報告されてきたが、これらの多くは心筋細胞への影響に関する研究であり、心臓線維芽細胞の関与や機序については未だ解明されていないことが多い。心臓線維芽細胞は、心筋細胞と同様に心臓組織を構成する細胞の1つであり、細胞外マトリックスの維持、および成長因子やサイトカインの合成に関して重要な役割を担う。申請者らは早くから、ドキソルビシンが持つ心毒性に着目し、その機序について研究してきた。我々の検討により、心臓線維芽細胞においてドキソルビシンの刺激により増加したp53やp21の蛋白発現がSOCE阻害薬であるYM-58483により、有意に減弱することが分かった。また、SOCEに大きく関わるCa2+チャネルの1つであるOrai1をノックダウンすることでも同様の結果が得られた。このことにより心臓線維芽細胞においてOrai1がドキソルビシンの心毒性に大きく関わっていることを発見し、査読付き論文に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々はマウスを用いてドキソルビシン負荷による心不全モデルを作成し、ドキソルビシンの心毒性におけるOrai1の関与を検討した。その結果、Orai1がドキソルビシンの心毒性に関与していることが動物実験でも証明出来た。さらに、我々は以前、プロスタグランディン受容体のサブタイプの1つであるEP4が、Orai1と供役することで、細胞外から細胞内にカルシウムイオンを流入させる機構であるストア作動性Ca2+流入機構 (Store-operated calcium entry:SOCE)に重要な働きをしていることを発見し、論文報告した。今回、本研究の過程でそのEP4がカルシウムイオンの濃度上昇やカルシウム関連タンパクの1つであるCALML6 (Calmodulin Like 6)を介して、ミトコンドリア機能を調節していることを発見した。その結果、EP4/CALML6シグナルは口腔がん細胞遊走や転移を正に調節していることも発見し、査読付き論文に新たに報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウムチャネルの1つであるOrai1は、ドキソルビシンの心毒性に関係しているだけでなく、がん細胞の遊走、転移にも関係することが我々の研究で明らかになった。今後は、その詳細なメカニズムをさらに検討する。とりわけ、先行研究により、Orai1が腫瘍免疫にも関係することが示唆されたために、腫瘍免疫におけるOrai1及びカルシウムシグナルの関与を評価する。
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Causes of Carryover |
R6年度にプロテオーム解析を計画しており、物品費で繰り越した予算を含め、本年度の予算と合わせてそちらに充てたいと思っている。今年は北九州で行われた日本生理学会のシンポジウムで本研究についての学会報告を行った。旅費については予定よりも少ない予算で行けたので、繰り越した予算については、R6年度に福岡で行われる日本がん学会を始めとした複数の学会での発表を計画している。
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[Presentation] EP4 promoted cell migration via mitochondrial biogenesis in oral cancer cells2023
Author(s)
Ishikawa S, Umemura M, Nakakaji R, Nagasako A, Nagao K, Mizuno Y, Suzuki F, Osawa K, Kioi M, Mitsudo K, Ishikawa Y
Organizer
The American Association for Cancer Research Annual Meeting (AACR 2023)
Int'l Joint Research
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