2023 Fiscal Year Research-status Report
正常卵管上皮の変異細胞集塊に着目した婦人科癌のゲノム病理学的研究
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22K06938
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 大地 金沢大学, 医学系, 教授 (30585500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 明輝 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (90317090)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 卵管上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のゲノム研究によって、癌のみならず背景の正常上皮に腫瘍原性遺伝子変異が生じていることが明らかになってきた。特に正常卵管においてはp53 signatureやβ-catenin signatureといった免疫組織化学的に局在の同定が可能な変異細胞集塊(signature病変)の存在が知られている。これらsignature病変に関しては、卵巣・卵管および子宮の高異型度漿液性癌や類内膜腺癌との関連が示唆されているが、前癌病変としての意義は十分に解明されていない。今回、我々は、正常卵管上皮、p53 signature、β-catenin signature、serous tubal intraepithelial carcinoma、浸潤性のhigh-grade serous carcinomaを対象として、空間的トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、正常卵管上皮からserous tubal intraepithelial carcinomaへの転換にあたって生じる遺伝子発現の変化に一定のパターンがあることを見出した。同時に、serous intraepithelial carcinomaの中にも浸潤性のhigh-grade serous carcinomaと同様の発現パターンを示す群が存在することが明らかとなった。すなわち、serous intraepithelial carcinomaには浸潤能の低い、low-gradeなものと、浸潤癌と同等の性質を既に有するhigh-gradeのものが存在することが示唆される。それぞれを特徴づける発現亢進遺伝子群と発現低下遺伝子群を絞り込んだので、biological significanceに関して今後、検討を加える。なお、signature病変に関しては、既存の卵管上皮との間に遺伝子発現に大きな違いが見出せなかった。空間的トランスクリプトーム解析の解像度の問題が背景にあるので、さらに高解像度のアッセイ系でデータ取得を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Serous tubal intraepithelial carcinomaの層別化につながる新知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
Signature病変の遺伝子発現プロファイルに関して高解像度の空間的解析を加えて、変異に伴って発現が変化する遺伝子群の同定に努める。発がんの初期イベントの描出、および、悪性化を定義する遺伝子発現パターンの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度に行う解析に充てる。
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