2022 Fiscal Year Research-status Report
アジアの自己免疫性胃炎の解明 -インドネシアからアジア諸国への展開-
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22K06943
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
内田 智久 大分大学, 医学部, 講師 (70381035)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / 自己免疫性胃炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性胃炎は、胃壁細胞と内因子に対する自己免疫反応により胃壁細胞が破壊される自己免疫性疾患であり、進行は緩徐で、病後期に出現する症状も非特異的であることから、正確な有病率等の疾病構造も未だ不明である。本邦はピロリ菌感染に伴う慢性萎縮性胃炎の頻度が高いため、自己免疫性胃炎の解明には、ピロリ菌感染の影響の少ない国・地域での解析が重要である。本研究では、これまでに自ら採取した、ピロリ菌感染率が低いインドネシア(ピロリ菌感染率10%)等の検体を解析し、自己免疫性胃炎の組織学的特徴、有病率を明らかにするとともに、自己免疫性胃炎のマイクロバイオーム解析から発症メカニズムに迫る。さらに、これまで採取してきたアジアの胃粘膜検体を精査し、アジアにおける自己免疫性胃炎の実態を解明する。 2022年度には、これまでに採取したインドネシア全土からの1,236検体の生検組織データベースから、自己免疫性胃炎の可能性がある体部優位の胃炎症例136例について、胃体部優位胃炎の組織学的な詳細な検討を、①胃底腺細胞の動態、②Enterochromaffin-like (ECL) 細胞過形成、③前庭部粘膜のガストリン細胞の過形成、④胃底腺粘膜の腺部での慢性炎症細胞浸潤について検討をおこなったところ、AIGの可能性が高い症例が6例抽出された。うち組織学的にAIGの可能性が高い症例が5例、ECL過形成を示す症例が5例抽出であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに採取したインドネシア全土からの1,236検体の生検組織データベースから、自己免疫性胃炎の可能性がある体部優位の胃炎症例136例について、①胃底腺細胞の動態・胃底腺細胞萎縮の程度・壁細胞の萎縮、消失の程度・主細胞の減少、消失の程度・化生幽門腺の有無・腺管の短縮と胃小窩の延長 ②Enterochromaffin-like (ECL) 細胞過形成・過形成の有無を、HE染色、抗クロモグラニンA抗体を用いた免疫染色で確認する。 ③前庭部粘膜のガストリン細胞の過形成・過形成の有無を、ガストリン抗体による免疫染色で確認する。 ④胃底腺粘膜の腺部での慢性炎症細胞浸潤を行い、組織学的にAIGの可能性が高い症例が5例抽出されたことから、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
生検検体と同時に採取している血清を用いて、以下の項目の検討を行う。 ・抗壁細胞抗体抗体価の測定 ・ペプシノーゲン(PG) I, II、ガストリンの測定 自己免疫性胃炎では、胃体部の萎縮を反映して血清ペプシノーゲンIやPG I/II比が低下する。また、胃酸分泌低下を反映して高ガストリン血症を示す。 自己免疫性胃炎の血清学的解析を進めるとともに、アジアの他の国での自己免疫性胃炎について、データベース解析とともに組織学的に精査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染により中断されていた、インドネシアをはじめとしたアジアの研究者との直接の議論がようやく再開されたところであるが、未だその影響が残り現地での研究の再開がやや遅れている。そのため、次年度使用額が生じた。2023年度には、AIGの解析を進めるとともに現地の研究者との対面での議論を再開する予定であり、次年度使用額については、その費用として使用する。
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