Outline of Annual Research Achievements |
この研究課題では,老化細胞制御による新しい原発性胆汁性胆管炎(PBC)治療法の開発基盤となる基礎的研究を行う。また, 現在明らかでない, 胆管細胞老化におけるcGAS (cyclic GMP-AMP synthase)-STING (stimulator of interferon genes)自然免疫シグナル経路の関与, 老化細胞の表現型バリエーションとPBCの胆管病変, 病型やウルソデオキシコール酸(UDCA)治療反応性などとの関連を検討する。 2023年度は, 以下の検討①-③を行った。 ①PBC肝組織における細胞老化の特徴と細胞老化の表現型バリエーション, 臨床病理学的項目との関連について, 対照疾患肝との比較検討を進めた。その結果,PBCでは胆管細胞老化に不均一性があり, 老化した肝内小型胆管の一部は, PD-L1を発現するが, 老化細胆管細胞にはPD-L1発現が見られないことが明らかになった(国際学会[AASLD2023]にて発表, 英文論文投稿準備中) ②胆管細胞老化におけるcGAS-STING経路活性化の関与について, 培養胆管細胞を用いて, cGAS, STING発現, cGAS-STING経路活性化指標(IFN-β, Ifit3)発現, PD-L1発現, STING発現抑制効果などの検討を進めた。培養老化胆管細胞では, PD-L1, STING, SASP発現が有意に亢進し, STING抑制により, PD-L1発現, SASP発現亢進, 細胞老化は有意に低下することが明らかになった (英文論文投稿準備中)。 ③組織透明化手法とライトシート顕微鏡を利用して, PBCと対照疾患肝, 正常肝の3次元(3D)胆管構築と胆管細胞老化の相互関連を検討した。PBCでは, 胆管成分が減少して, 3D構築が変化することが明らかになった (病理学会総会2024にて発表)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は, PBC肝組織における細胞老化の特徴と細胞老化の表現型バリエーション, 臨床病理学的項目との関連について, 対照疾患肝との比較検討を進めた。その結果,PBCでは胆管細胞老化に不均一性があり, 老化した肝内小型胆管の一部は, PD-L1を発現するが, 老化細胆管細胞にはPD-L1発現が見られないことが明らかになった。成果の一部を, 国際学会[AASLD2023]にて発表することができた(英文論文投稿準備中)。また, 胆管細胞老化におけるcGAS-STING経路活性化の関与について, 培養胆管細胞を用いて検討を行い, 老化胆管細胞では, PD-L1, STING, SASP発現が有意に亢進し, STING抑制により, PD-L1発現, SASP発現亢進, 細胞老化は有意に低下することを明らかにした (英文論文投稿準備中)。さらに, 組織透明化手法とライトシート顕微鏡を利用して, PBCと対照疾患肝, 正常肝の3次元(3D)胆管構築と胆管細胞老化の相互関連を検討した。PBCでは, 胆管成分が減少して, 3D構築が変化することが明らかになった (病理学会総会2024にて発表)。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は, ①PBC肝組織における細胞老化の特徴(表現型バリエーションやcGAS-STING経路の関与, PD-L1発現との関連)とその意義についての検討をさらに進める。また, 組織透明化とライトシート顕微鏡を利用して,胆管細胞老化と胆管, 血管の3次元構築の関連を明らかにする。さらに, ②当教室で株化したヒト, ラット, マウス培養胆管細胞, miR-506導入胆管細胞などを用いて, 老化細胞の特徴(表現型バリエーションやcGAS-STING経路の関与)の検討と, 老化細胞除去薬やcGAS-STING経路制御の効果について検討を進める。
|