2023 Fiscal Year Research-status Report
リン酸化で再定義するオステオポンチンによる癌悪性化機構と創薬への応用
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22K07004
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458217)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オステオポンチン / がん / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度に実施した主な研究業績としては以下の3つが挙げられる。 1) リン酸化ミミックOPN発現ベクターの作製及び発現癌細胞の樹立;昨年同定したリン酸化部位をPCR変異導入法によりセリンからグルタミン酸に置換したリン酸化ミミックOPNを作製した。その発現ベクターをヒト膵癌細胞株MIAPaca2および肺癌細胞株H358に遺伝子導入し、それぞれの発現細胞株を樹立した。 2) 癌細胞の運動におけるリン酸化ミミックOPN発現の影響:lacZ(コントロール)、野生型OPN、リン酸化ミミックOPNをそれぞれ発現させた膵癌細胞株MIAPaca2および肺癌細胞株H358についてBoyden Chamberを用いた細胞運動およびマトリゲルを用いた浸潤アッセイを行った。その結果、いずれのアッセイにおいてもリン酸化ミミックOPN>野生型OPN> lacZ(コントロール)の関係となった。以上の結果から、同定したリン酸化部位のリン酸化はOPNの持つ細胞運動や浸潤活性を上昇させることが明らかとなった。 3) 癌細胞の腫瘍形成におけるリン酸化ミミックOPN発現の影響: lacZ(コントロール)、野生型OPN、リン酸化ミミックOPNをそれぞれ発現させた膵癌細胞株MIAPaca2を、免疫不全マウスに皮下移植し腫瘍形成能を観察した。その結果、腫瘍体積、重量ともに野生型OPN> lacZ(コントロール)> リン酸化ミミックOPNの関係となった。これらの結果から、同定したリン酸化部位がリン酸化されたOPNは腫瘍形成を抑制する活性を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度ではリン酸化ミミックOPN発現ベクター及び発現細胞の樹立、またそのリン酸化の運動活性や腫瘍形成への影響について解析を行った。これは申請書で計画していた予定に従っており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度樹立したリン酸化ミミックOPN発現癌細胞を用いて、幹細胞性や各機能に関するシグナル経路の同定を行なっていく。また、リン酸化OPNを認識する抗体を用いて実際の腫瘍組織におけるリン酸化OPNの発現および局在について検討する。これら及びこれまでの結果を総合的に判断することで、リン酸化OPNによる癌の悪性化モデルを提唱する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として生じた208,061円は、物価の上昇により試薬価格が高騰したため購入を断念せざるを得なかった試薬があったことから生じた。購入できなかった試薬などは次年度の経費と合わせることで購入する予定である。
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