2022 Fiscal Year Research-status Report
アフリカメダカを使った加齢関連疾患の臓器特異的な病態因子の探索と解析
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22K07020
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
菱田 竜一 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (90313551)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アフリカメダカ / 老化 / 加齢関連疾患 / 生活習慣病 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
個体老化とそれに続く死を避けるのは、不老不死のヒトの報告例がないことから推測して、原理的に不可能あるいは早期解決が困難な難問だと思われる。一方、認知症・心不全・肝疾患・サルコペニアなどの加齢関連疾患は、加齢により発症率は上昇するが、罹患するか否かには個人差がある。この事実から、加齢関連疾患の病態因子を保持しないことや除去することは原理的に可能であり、罹患頻度から推測して珍しくもない事象だと推測される。以上より、「各臓器には、個体の老化とはある程度分離できるような固有の老化プロセスがあり、その進行により加齢関連疾患が発症する。そのプロセスに固有な病態因子には除去可能なものがあり、除去により発症が防げる」という仮説に至った。そこで本研究では、この仮説に立脚し、「アフリカメダカという老化モデルを使い、認知症・心不全・肝疾患・サルコペニアなどの加齢関連疾患の病態を解析、臓器特異的な病態因子を網羅的に探索する。見出した因子を解析することで加齢関連疾患の病態生理メカニズムを解明し、将来的には医療福祉(予防・治療戦略の探求など)に役立つような知見を得る」ことを研究目的とした。本年度は、若魚と老魚から摘出した4臓器(脳・心臓・肝臓・筋肉)を対象に組織学的な病理解析を行った。HE染色による形態観察、アザン染色による線維化の検出、老化マーカーの定量などを行い、加齢によって進行したと思われる各臓器の一般的な病態を見出した。今後は、各種抗体を用いた免疫染色により、炎症細胞の浸潤、細胞質へのDNA漏出、各臓器に特徴的な病態の解析へと進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
同じくアフリカメダカを使用する研究者が研究室内に増えただけでなく、研究室の移動やデザイン変更などの影響もあってかアフリカメダカの飼育状況が想定より悪かったことも影響して実験に使用可能な匹数が少なくなった(現在は改善済み)。更には、免疫染色に使用する二次抗体の特異性を検証するなど、いくつかの実験条件の試行錯誤が必要となって時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、生化学的な病態解析を行う。IL6などの炎症反応の定量、ミトコンドリア機能解析、脂質解析などの解析を行う。 2、機能的な病態解析を行う。学習を解析できる水槽を作製し、記憶学習能力を測定する。脳機能を測定するため、GCaMPカルシウムプローブを神経系で発現する系統を作製、自発な神経活動レベルや視覚刺激などに対する神経活動を解析する。水槽を動画撮影して運動能力を測定する。麻酔下で拍動する心臓を動画撮影して心臓機能を測定する。 3、加齢関連疾患の臓器特異的な病態因子を探索する。 若魚と老魚から4臓器のサンプルから得たRNA シークエンスのデータについてバイオインフォマティクス解析を行い、各臓器に特異的な加齢関連疾患の病態因子の抽出を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由) アフリカメダカの飼育状況が想定より悪くて実験に使用可能な匹数が少なかったこと(現在は改善済み)、および各種実験条件の試行錯誤が必要となったことにより進捗が遅れた。そのため、研究の進展を遅らさざるを得なくなり、使用する予定であった研究費が未使用となったことから次年度使用額が生じた。 (使用計画) 生化学的な病態解析および機能的な病態解析などに必要な物品などの購入に使用する。掛かる消耗品費を次年度以降に繰り越し。
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