2022 Fiscal Year Research-status Report
骨髄微小環境におけるSiglec-15 を介した多発性骨髄腫の病態進展機序の解明
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22K07031
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石橋 真理子 日本医科大学, 医学部, 講師 (20599047)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 腫瘍微小環境 / Siglec-15 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】多発性骨髄腫の腫瘍微小環境では、骨髄腫細胞(腫瘍細胞)だけでなく、マクロファージや破骨細胞においてもSiglec-15が発現している。当該年度においては、骨髄腫における骨髄微小環境におけるSiglec-15の発現と骨髄腫微小環境下におけるSigelc-15が病態進行に関与する機序の解明を目標とした。 【結果】 (1)骨髄腫細胞におけるSiglec-15の遺伝子発現量と予後に関して、症例数を増やして検討を行った。その結果、骨髄腫細胞においてSiglec-15を高発現する症例では予後が有意に悪かった。一方で、PD-L1の発現を調べたところ、PD-L1発現量は予後に関連がなかった。このことから、Siglec-15の発現の方が骨髄腫病態を反映しており、Siglec-15が骨髄腫細胞の治療標的として有用ではないかと推察された。 (2) 骨髄腫細胞、骨髄ストローマ細胞、マクロファージ細胞株との共培養により、骨髄腫細胞とマクロファージにおいて、Siglec-15が強く誘導された。しかしながら、cytokine arrayを用いて培養上清中のサイトカインを検索して、Siglec-15の誘導因子の同定を試みたが、誘導因子の同定までには至っていない。また、骨髄腫微小環境では破骨細胞への分化が進み、破骨細胞上のSiglec-15の発現が誘導されていることから、骨髄腫微小環境では、骨髄腫細胞、マクロファージ、破骨細胞においてSiglec-15の発現が増加すると示唆された。しかしながら、Siglec-15の発現解析は進んでいるが、骨髄腫細胞やマクロファージ等のSiglec-15ノックアウト(KO)細胞の樹立に難渋しているため、機能解析が進んでいないのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究計画は、当初の計画よりもやや遅れている。その原因として、機能解析を行うために、骨髄腫細胞、マクロファージのSiglec-15KO細胞の作成が上手くいかず、Siglec-15KO細胞が樹立できていないためである。CRISPR-Cas9システムのいくつかの方法を試しながら、現在Siglec-15KO細胞の樹立を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSigelc-15KO細胞を早々に樹立して、(1) Sigelc-15KO細胞を用いて、細胞増殖能、薬剤耐性等の腫瘍の増悪化、T細胞免疫の抑制に関与しているのか検討する(in vitro)。また、Sigelc-15KO細胞をマウスに移植し、マウス骨髄腫モデルを作成する。WTとSigelc-15KO骨髄腫細胞の違いにより、骨髄微小環境下においマクロファージ・樹状細胞、T細胞等の免疫細胞の割合、活性化、増殖能に違いが出るのか、フローサイトメトリーにて検討を行う(in vivo)。また、骨髄微小環境下での細胞間相互作用を明らかにするため、大腿骨組織を脱灰し、免疫組織蛍光染色で検討する。更に、大腿骨を高性能X線マイクロCT装置にて、骨微細構造や骨密度を解析する。(2) Siglec-15のリガンドが不明なため、骨髄腫細胞、マクロファージ、樹状細胞、破骨細胞、また、T細胞のそれぞれの蛋白抽出液と組換え蛋白Siglec-15-Fcを用いた免疫沈降法にて、Siglec-15に結合するリガンドを同定する。これら解析にて、骨髄腫おいてSiglec-15が抗腫瘍免疫抑制と骨病変促進などによる骨髄微小環境異常を誘導する機構を解明する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、骨髄腫細胞、マクロファージのSiglec-15KO細胞の作成し、その細胞を使用し機能解析を行う予定であった。しかしSiglec-15KO細胞の樹立が遅れているため、それら細胞を用いた機能解析に使用する消耗品等の研究費を使用しなかったために、次年度使用額に差額が生じた。次年度では、Siglec-15KO細胞が樹立できる予定であるため、機能解析に使用する消耗品(培養、実験関連プラスチッ ク)、実験試薬 (抗体、サイトカイン、real-time PCR試薬、ELISA、等)、マウス購入に使用する。
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