2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of molecular mechanisms of ALS-linked FUS protein and dysregulation.
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22K07032
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石黒 亮 法政大学, マイクロ・ナノテクノロジー研究センター, 研究員 (70373264)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / RNA / RNAシャペロン / 液液相分離 / グアニン四重鎖 / FUS / PDI / TDP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの先行研究及び本研究遂行の過程で、ALS(amyotrophic lateral sclerosis; 筋萎縮性側索硬化症)関連因子、FUS (fused in sarcoma)の天然変性領域がグアニン四重鎖RNAとの相互作用だけでなく、立体構造を形成したグアニン四重鎖RNAの構造を変更するRNAシャペロンとして寄与する分子機構を初めて明らかにした。また、若年性ALS患者に由来するFUS変異(P525L)では、野生型FUSと比較して結合グアニン四重鎖RNAの構造に大きな相違がある事を見出した。P525L変異タンパク質の二次構造を円偏光二色性(CD)解析により解析したところ、他ALS変異と異なり、単独でグアニン四重鎖RNAと結合した形態を模倣する二次構造比率を示した。実際、in vitroではグアニン四重鎖RNAを添加しなくても液液相分離(liquid-liquid phase separation: LLPS)を介した液滴形成が野生型より促進される。P525L変異タンパク質の過度な液滴形成能はグアニン四重鎖RNAが無いため安定性を保つ事が出来ず、短時間で凝集体形成まで進むと示唆された。P525L変異は構造変化を惹起し、あたかもグアニン四重鎖RNAと結合した構造に類似する反面、RNA無しで安定性を保つ事ができず、液液相分離で形成される液滴が野生型より早く崩壊すると考えられた。また、本研究の新たな展開として、グアニン四重鎖RNA依存的液液相分離の分子動態を制御する細胞内因子の捜索も行った。多数の候補タンパク質を用いた生化学的スクリーニングにより、2つの候補を同定するに至った。FUSの相分離機能に直接作用するタンパク質因子の報告はこれまでに例が無く、RNA顆粒の形成や凝集への影響が明らかになれば、現在不明の神経変性疾患発症機序解明に直結すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
若年性ALS患者に由来するP525L変異FUSタンパク質ではグアニン四重鎖非存在下でも液液相分離と凝集の極端な促進が確認されたことは興味深く、この変異が極めて稀な影響を及ぼすと考えられる。より生体内に近い条件下でALS患者由来FUS変異を比較解析する目的で、新たな制御因子の捜索も行った。多数の候補タンパク質を用いた生化学的スクリーニングの結果、PDIA1(protein disulfide isomerase A1)及びPDIA3(protein disulfide isomerase A3)を同定した。驚くべき事にこれらをコードする遺伝子は家族性ALSの責任遺伝子であり、細胞内でFUSとの共局在も報告されている。PDIA1及びPDIA3は細胞内でタンパク質の分子内ジスルフィド結合を触媒する酵素として知られ、小胞体のみならず核や細胞質でも機能している。両タンパク質はグアニン四重鎖依存的なFUSの液液相分離によるRNA顆粒の形成及びその維持に何らかの影響を持つと仮定し、詳細な解析を開始した。既にそれぞれの家族性ALS患者で報告されているアミノ酸変異を有するタンパク質の発現と精製に成功しており、RNA顆粒形成システムの破綻に起因するALSの発症機序解明を目的に、in vitro及び培養細胞での検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を基にFUSのRNAシャペロン機能、液液相分離、及び凝集について高度に精製したFUS、PDIA1及びPDIA3を用いてin vitro再構成系による評価を実施する。既にそれぞれのALS患者由来アミノ酸変異タンパク質の準備は完了しており、早期に結果が得られる可能性が高い。また、FUSだけでなく、同様の分子制御は同じくALS変異が知られるグアニン四重鎖結合タンパク質、TDP-43(TAR DNA-binding protein of 43 kDa)、TIA1(T cell intracellular antigen-1)でも存在すると考えられ、既にタンパク質も精製済みである為、同時進行で比較解析したい。加えて、in vitroで得られた結果の再現性を生理活性条件下でも確認する為、細胞内動態の解析も行う。解析にはiPS由来の運動ニューロン様細胞を用い、細胞内での局在を蛍光標識免疫染色で詳細な観察を行う。液滴と凝集体の区別は、FRAP (fluorescence recovery after photobleaching) 解析及び、液液相分離の阻害剤である1,6-hexanediol を用いる。 神経変性疾患は患者と家族も含めたQOLを著しく損ね、完全な回復は望めない。故に先駆的取組による分子レベルでの発症機序解明は治療法確立や治療薬開発の一助になると期待される。本研究は既存のアミロイド仮説に収まりきらない新規疾患原理の分子基盤確立に寄与し、得られる成果は今後の新規研究課題開拓に繋がる。
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Causes of Carryover |
調達方法の工夫により、当初計画より経費の使用が節約できたことにより生じた未使用額(7,473円)は、今後円安ドル高の影響で、消耗品費や旅費の値上げが続くと予想される為、次年度の価格上昇分へ充てる。次年度は薬品、核酸合成、細胞培養、抗体、培養細胞などの消耗品費と学会参加を目的とした旅費を予定している。
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