2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07055
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
幸田 知子 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 講師 (80336809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片平 じゅん 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 准教授 (30263312)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ボツリヌス神経毒素 / モノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が所属する研究室で開発された抗ボツリヌスE型神経毒素(BoNT/E)完全ヒト化モノクローナル抗体(hmE9-4)は、BoNT/Eの酵素活性ドメインである軽鎖(L/E)を認識し、単独、かつ、ごく低用量でBoNT/Eの毒素活性を中和する。hmE9-4のBoNT/E毒素中和機構を明らかにするために本年度は、ELISAとhmE9-4のエピトープに関わる領域の同定とhmE9-4とL/Eの分子間相互作用をELISAと等温滴定型カロリメトリー(ITC)により測定した。 L/EとhmE9-4の構造情報を基にしたドッキングシミュレーションソフトから予想された領域2か所(m2, m3)とL/Eの疎水性ポケットの一つで234-244までの連続した領域で250 loopと呼ばれる不安定で結晶化されない部分(m4, m5, m6)をターゲットとした。さらにL/Eの酵素活性中心である亜鉛結合モチーフの点変異体(m8)を加えて合計7つのL/E変異体を作製した。野生型L/Eおよび変異体L/Eを抗原とし、ELISAを行った。hmE9-4を1次抗体、2次抗体に検出用のgoat anti-human IgGを反応させ、基質を発色させた。m3だけが優位に結合の低下が見られた。 さらに、hmE9-4とL/E分子間の相互作用をITCで測定した。1 μMのL/Eに対し、10 μMのhmE9-4をリガンドとし滴下すると発熱が観察され飽和状態に達した。hmE9-4 1分子に2分子のL/Eが結合し、解離定数は約0.57 x 10^10 Mと高く、イオン結合や水素結合によって起こるエンタルピー変化であることが分かった。また、m3 L/Eの解離定数は、約16.0 x 10^10 Mで、野生型L/Eがm3 L/EよりもhmE9-4に対し高い結合親和性を持っており、ELISAの結果と一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
hmE9-4の認識エピトープを明らかにするために、分子量150 kDa のIgG抗体では分子量が大きすぎるため、共結晶化は困難であるため、重鎖Fc部分を改変し、Fab発現ベクターを構築し、Fab抗体(分子量50 kDa)を作製した。hmE9-4 FabとL/Eとの複合体を作製し、陽イオンクロマトグラフィー、ゲルろ過により精製した。現在、精製複合体の結晶構造解析を実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶構造解析によりhmE9-4のエピトープと抗原認識に関わる可変部アミノ酸が明らかにする。hmE9-4可変部の配列情報を加味し、ドッキングモデルの修正・再構築を行う。また、hmE9-4エピトープに相当するアミノ酸をL/E以外のヒトのボツリヌス症を引き起こすA, B, F型L(以下L/A, L/B, L/F)についても、当研究室保存のmAbを用いてhmE9-4のエピトープ認識するmAb候補を選抜する。これら候補mAbのBoNT中和能やITCによるL/A, L/B, L/Fとの結合親和性を調べ、有用なmAbについて可変部のシークエンス解析を行い、リコンビナントmAbを作製し、抗体カクテルのシードとして用いる。
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Causes of Carryover |
hmE9-4とE/L 複合体の結晶化の条件が決定できず、hmE9-4のエピトープと抗原認識に関わる可変部アミノ酸が明らかに出来なかった。hmE9-4のコンストラクションを変更し、hmE9-4を作製中である。新たなhmE9-4とE/Lとの複合体を再構築し、結晶構造解析を行い、認識エピトープを明らかにする。
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