2023 Fiscal Year Research-status Report
完全ゲノム配列によるコレラパンデミック変遷の新たな理解
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22K07059
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今村 大輔 法政大学, 生命科学部, 准教授 (70454650)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コレラ / Vibrio cholerae |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、コレラ流行株の完全ゲノム配列を解析することにより、染色体の構造変化、リピート配列の数や並びなど、ドラフトゲノム解析では得られない、コレラ流行株の変化に関する新たな知見を得ることを目的としている。コレラ菌においては、コレラ毒素をコードする遺伝子があるプロファージ領域が繰り返して配置されていることが多く、この配置が病原性や毒素遺伝子の伝播にも関与しているため、完全ゲノム配列によってゲノム上の繰り返し配列の数や配置までを明らかにすることは、現在、パンデミックを起こしている流行株の変化を理解する上で重要である。 今年度は、コレラ流行株に特異的に見られるゲノム領域の増加現象に関与している遺伝子を特定するため、GWAS(ゲノムワイド関連解析)を行い、ゲノム領域の増加と関連性が有意に高い変異を有する遺伝子を特定することに成功した。この遺伝子の5’領域に欠失または変異がある株では、ゲノム領域の増加が起こりにくくなっていることから、この遺伝子がゲノム領域の増加に関与している可能性が示唆された。また、インド・西ベンガル州のコルカタ市の感染症病院で、下痢症患者から分離されたコレラ菌、およびNAGビブリオ菌のゲノム配列を取得した。そこで、これらの株の完全ゲノム配列を第7次パンデミックの参照株や、様々な血清型のNAGビブリオ菌と比較することにより、最近はどのような系統の株が流行しているのか、コレラ流行株のゲノムには、近年、どの様な変化が起こっているのか、また、それがパンデミックの発生や継続にどの様な影響を及ぼしているのかを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム領域の増加現象に関わっている遺伝子の特定が難航していたが、今年度、GWAS解析によって関連性の高い変異を見つけることができた。また、インドの下痢症患者から分離された流行株のゲノム配列も取得できたため、解析は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム領域の増加と高い相関の見られた遺伝子の破壊株を作製し、そのゲノム増加現象への影響を明らかにする。また、近年の流行株を以前の流行株と比較することにより、近年の流行株の特徴や変化を解析する。
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Causes of Carryover |
今年度予算の範囲で使用したため、少額の繰越金が生じた。繰越金も用いて次年度に計画通りの解析を行う。
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Research Products
(4 results)