2023 Fiscal Year Research-status Report
バルトネラ属細菌の新規オートトランスポーターによる血管新生シグナル活性化機構
Project/Area Number |
22K07060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塚本 健太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (80434596)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バルトネラ / Bartonella / 猫ひっかき病 / オートトランスポーター / BafA / 血管内皮細胞 / 血管新生 / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
Bartonella henselaeは猫ひっかき病の原因菌として知られるが、免疫不全者に感染すると血管新生を促進して血管腫を形成する。この血管腫形成の責任因子として、我々はこれまでにBartonella属の細菌に広く保存される血管新生因子BafAを同定し、前年度はその活性が菌種間で異なることを明らかにした。一方、同一菌種内の異なる菌株間において、血管内皮細胞に対する作用に違いがあるのかどうかは分かっていない。そこで今年度は、複数のB. henselae株について、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対する増殖能およびbafA遺伝子の多様性を調べた。 異なる動物種から分離されたB. henselae 13株をHUVECに感染させたところ、菌株によってHUVECに対する増殖能が異なった。次に、各菌株のHUVEC増殖能とBafAとの関連性を調べるため、bafA遺伝子の有無と、それらがコードするアミノ酸配列を比較した。その結果、13株全てがbafA遺伝子を保有していたが、その配列は異なる2つのvariant(BafA variant 1および2)に分類された。そこで、これらのBafA variantをリコンビナントとして作製して活性を測定した。その結果、いずれのリコンビナントもBafA濃度依存的にHUVECに対して増殖活性を示したが、BafA variant 1とvariant 2の活性に有意差は認められなかった。次に、各菌株の培養上清中のBafA分泌量を比較したところ、上清中のBafA量は菌株間で異なった。また、この培養上清をHUVECに添加した結果、菌株ごとにHUVECの増殖能に違いが認められた。以上の結果から、B. henselaeの菌株間にみられたHUVECに対する増殖能の違いには、BafA分泌量やbafA遺伝子の発現量が関与している可能性が考えられた一方、それらに加えて他の因子も影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Bartonella henselaeにおいて、血管内皮細胞に対する作用が菌株間で異なることを見いだし、これが本菌感染症の多様な病態に関与している可能性を示す結果を得た。この成果については現在論文投稿準備中である。BafA-VEGFR2複合体構造の解析については、クライオ電子顕微鏡によるデータセットを取得してみたが、構造を解くまでには至らず、その原因として溶液中での複合体が安定に存在していないことが示唆された。また、当該年度内に研究代表者が所属変更し、新たな研究室を立ち上げるために時間を要したため、研究計画全体に若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
BafA-VEGFR2複合体の構造解析については、マスフォトメトリーを用いて安定した複合体構造を形成できる条件をスクリーニングする。特に、VEGFR2のC末端にFcタグを付加して二量体化させることで、BafAと高い親和性で結合することができると予想している。また、活性発現に関わる宿主因子については、すでに候補として考えられている因子とBafAの共免疫沈降の実験を進めており、結合の有無を確認する。結合が確認できれば、該当因子をsiRNAによりノックダウンし、血管内皮細胞のBafAに対する感受性が変化するかどうか調べる。また、BafAについてもプロテアーゼによる切断予想部位を改変し、活性に変化が生じるかどうか検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度中に研究代表者が所属変更したため、当初計画していた実験の一部が実施できなかった。そのため、次年度使用額が生じている。新たな所属先での研究環境の整備もほぼ完了したため、次年度は「今後の研究の推進方策」で述べた実験が遂行できる見込みとなっている。そのため、前年度からの繰越分も含めて本年度の予算は計画通り使用する予定である。
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