2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07070
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三好 伸一 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (60182060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ビブリオ / 温度センサー / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
汽水から海水に生息するビブリオ・バルニフィカスは、26℃(夏季の海水温)ではプロテアーゼVvsAを大量に生産・分泌する。しかし37℃(ヒトの体温)ではVvsAを殆ど生産・分泌しない。つまり、この細菌は環境温度を感知するセンサーシステムを備えている。 令和4年度は、温度上昇の感知に関与するセンサー蛋白質を探索するため、野生株のトランスポゾンTn10変異株ライブラリーから、温度変化を感知できず、37℃でも十分量のVvsAを生産・分泌する変異株を選抜し、Tn10が挿入された遺伝子を同定した。 Tn10挿入変異株ライブラリーを1%スキムミルク添加寒天培地に接種し、26℃あるいは37℃で2~4日間培養した。そして、常に、37℃でもVvsAを生産・分泌し、スキムミルクを分解して、コロニーの周囲にクリアゾーンを形成する安定な変異株を16個選抜した。次に、選抜した変異株を26℃あるいは37℃で振とう培養し、37℃において、26℃と同程度以下の増殖を示した変異株14個を二次選抜した。さらに、低温環境に曝露後も低温ショック蛋白質の遺伝子cspAの発現が誘導されないことを確認した。26℃あるいは14℃に1時間曝した後、cspAのmRNA量をRT-qPCR法で測定した。その結果、12個の変異株では、14℃に曝されてもcspAのmRNA量は増加しなかった。以上の選抜操作によって、温度センサーシステムが機能していないと考えられる変異株を12個得ることができた。 選抜した12個の変異株からゲノムDNAを精製し、genome walkingによってTn10に隣接する領域をPCR増幅したところ、11個の変異株では明瞭なPCR増幅物が得られた。次いで、PCR増幅物の塩基配列を解析し、BLAST検索を行った。その結果、9個の変異株については、Tn10が挿入された遺伝子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、3つの研究項目を同時並行的に実施することを予定している。 令和4年度は、4年間の研究期間の1年目ではあるが、「研究項目1:温度センサーシステム構成蛋白質候補の抽出」の途中までしか、研究が進捗していない。つまり、「研究項目2:温度センサーシステム構成蛋白質の同定」、「研究項目3:温度センサーシステム構成蛋白質の機能解析」については、未だに研究に着手できていない。よって、「(3) やや遅れている」と判断した。 本研究の進捗が遅れている原因の1つは、DNAシーケンサーの故障によるPCR増幅物の塩基配列解析の遅れである。当該機器(共同利用機器)については、早急に修理されることを期待していた。しかし、修理されないことが決定したため、令和5年度からは、塩基配列の解析については外注をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究項目1:温度センサーシステム構成蛋白質候補の抽出」に関しては、選抜した9個の変異株においてTn10の挿入が確定された遺伝子について、個々の遺伝子を破壊した菌株を野生株から作製し、その表現型(毒素の生産、バイオフィルムの形成など)を26℃と37℃で比較し、温度センサーシステムを構成する蛋白質の候補を絞り込む。 「研究項目2:温度センサーシステム構成蛋白質の同定」に関しては、選抜した9個の変異株について、37℃において、表現型および分泌蛋白質や外膜蛋白質のプロファイルを野生株と比較する。この比較により、Tn10が挿入された遺伝子の産物が、温度センサーシステムを構成する蛋白質であると結論できる。 「研究項目3:温度センサーシステム構成蛋白質の機能解析」に関しては、それぞれの蛋白質についてバイオインフォマティクス解析を行い、機能モジュールや機能発現に必須のアミノ酸残基に関する情報を取得し、それぞれの蛋白質が環境温度の変化を感知する仕組みについて考察する。
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Causes of Carryover |
直接経費の項目「その他」には、PCR増幅物の塩基配列の解析費を計上していた。しかし、DNAシーケンサーの故障により、数ヶ月間は、PCR増幅物の塩基配列を解析することができなかった。当該機器(共同利用機器)については、早急に修理されることを期待していた。しかし、修理されないことが決定したため、年度の途中からは(別経費により)解析を外注した。令和5年度からは、塩基配列の解析費(外注費)については、本経費により執行する予定である。
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