2022 Fiscal Year Research-status Report
サルモネラT3SS-2によるマクロファージ細胞死誘導機構の解明
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22K07073
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
羽田 健 北里大学, 薬学部, 講師 (00348591)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サルモネラ / T3SS-2 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルモネラは独立した2つのIII型分泌機構(Type III Secretion System; T3SS-1および -2)を保有し、これらの分泌機構から宿主細胞に直接分泌・注入されるタンパク質(エフェクター)が病原性発現において中心的な役割を担う。これまでにCaspase-11遺伝子欠損RAW(Casp11-KO)細胞ではサルモネラのT3SS-2により誘導されるマクロファージの細胞死がRAW細胞の50%程度に低下することを明らかにした。このことは、サルモネラに感染したマクロファージではT3SS-2によってCaspase-11依存的な細胞死(非典型パイロトーシス)の他、未同定のCaspase-11非依存的細胞死が誘導されることを示す。 本研究ではCaspase-11非依存的細胞死に注目し、アポトーシス、ネクロトーシス、またはオートファジー細胞死のような既知の細胞死であると仮説を立て、Casp11-KO細胞にサルモネラを感染した後、各種細胞死の阻害剤を培地に添加し、細胞死の指標として培養上清中の乳酸脱水素酵素(LDH)を測定した。その結果、カテプシンB阻害剤であるCA074-Meを培地に添加することにより細胞死が抑制された。そこでRAW細胞のカテプシンB欠損(CtsB-KO)細胞を作製し、同様にLDHを測定したところ、サルモネラを感染したRAW細胞と比較して低下した。このことからサルモネラによるCaspase-11非依存的細胞死にカテプシンBが関与することが明らかとなった。しかし、CtsB-KO細胞にCA074-Meを添加してもLDHが低下することから、T3SS-2によって誘導されるCaspase-11非依存的細胞死にはカテプシンB以外の宿主因子が関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CA074-MeによってCaspase-11非依存的細胞死が阻害されることを見出せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
CA074-MeはカテプシンB阻害剤として知られているが、カテプシンB以外のターゲットの存在が報告されている。本研究においてもCtsB欠損RAW細胞においてもCA074-Meの添加によりLDHの分泌量が低下したことから、サルモネラのT3SS-2によるCaspase-11非依存的細胞死にCathepsin B以外の宿主因子が働く可能性が示唆された。今後はサルモネラ感染したCasp11-KO細胞のCA074-Me添加群と未添加群のプロテオーム解析を行うことでCA074-Meによって発現が変動したタンパク質に注目し、細胞死との関連を調べる予定である。 一方で、これまでに同定した細胞死に関わる5つのエフェクターのうち、3つエフェクターをコードする遺伝子を欠損したd3株ではCaspase-11非依存的細胞死が全く見られなくなることを明らかにしている(データ未発表)。このことは、未同定の細胞死の誘導にこれら3つのエフェクターが関与することを示唆している。そこでd3株に3つのエフェクターをそれぞれ導入した相補株をCasp11-KO細胞に感染する。d3株と比較して有意に細胞死を誘導する相補株を得ることで、この細胞死に関与するエフェクターが明らかとなる。
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Causes of Carryover |
消耗品(1品)の納期の遅れにより未使用額が生じた。当該消耗品は次年度購入する予定である。
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