2023 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系細胞における新型コロナウイルス持続感染機構の解析
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22K07086
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村本 裕紀子 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (70436567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永樂 元次 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (40415097)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年末から流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状は上気道炎などの呼吸器症状であり、高齢者や基礎疾患患者では重篤な肺炎や呼吸困難を起こす。一方で、さまざまな神経障害を伴う症例が多数報告されている。特に、COVID-19から回復した後の長期的な後遺症(Long COVID)として、嗅覚/味覚障害、眩暈や記憶障害、ブレインフォグなど、神経障害が長期に続く例が多数報告されている。COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)は、鼻腔や肺などのヒト呼吸器組織で効率よく増殖する。加えて、in vitroにおいて神経系培養細胞や脳オルガノイドに感染すること、また、COVID-19感染により亡くなった患者の皮質ニューロンにおいてもウイルス抗原が認められたことから、神経指向性があるとも考えられる。本年度は鼻腔オルガノイドの作出を進めたところ、呼吸上皮において線毛運動を観察できた。オルガノイドに新型コロナウイルスを感染させたところ、培養上清中のウイルス価が時間経過とともに上昇し、ウイルスの増殖が認められた。さらに経時的に感染が広がる様子を確認できた。今後はオルガノイドにおけるウイルス感染細胞を同定するとともに、宿主因子遺伝子を欠損させたオルガノイドを作出し、そのオルガノイドに新型コロナウイルスを感染させた場合のウイルス増殖性および感染の広がりを調べる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでとは異なる方法を用いてオルガノイドの作出を進めたところ、呼吸上皮に線毛運動が観察されるようになった。より生体に近い組織を準備できるようになったと考えられる。加えて、新型コロナウイルスだけでなく、他の呼吸器ウイルスを感染させ、その増殖および感染の拡がりを確認した。さらに、新型コロナウイルスの感染に関与すると予想される宿主因子を欠損させたヒトES細胞の準備を完了した。今後は、それら宿主因子欠損ES細胞を用いて分化誘導を行うことで、宿主因子欠損オルガノイドを作出し、新型コロナウイルス、比較対象として他の呼吸器ウイルスを感染させることで、新型コロナウイルスの感染に重要な宿主因子を同定する計画である。以上より、順調に研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新型コロナウイルスの感染に重要な宿主因子を同定することを目的として、宿主因子欠損オルガノイドを分化誘導し、新型コロナウイルスを感染させてウイルス増殖性を調べる計画である。このとき、他の呼吸器ウイルスを感染させた場合と比較する。新型コロナウイルスの増殖が著しく抑制された場合には、該当の宿主因子が新型コロナウイルスの感染や増殖に重要であると考えられる。新型コロナウイルスが増殖した場合には、オルガノイドの免疫組織化学染色や発現解析により感染細胞を検出して細胞種を推定し、中枢神経系細胞であるかどうかを確認する。宿主因子を欠損していないオルガノイドへ新型コロナウイルスを感染させた場合の感染細胞と比較することで、中枢神経系細胞への感染に重要な役割を持つ宿主因子や中枢神経系細胞への侵入経路を見出す、また他の呼吸器ウイルスを感染させた場合と比較することで、それが新型コロナウイルス特異的であるかどうかを確認する計画である。
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Causes of Carryover |
今年度はオルガノイド分化誘導の検討に時間を要したため、予定より使用金額が少なくなった。来年度は宿主因子欠損細胞からの分化誘導を頻繁に行い、オルガノイドを多数準備すること、さらに感染実験を行い、オルガノイドの発現解析を行うため、消耗品費および解析費を多く使用する計画である。
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