2022 Fiscal Year Research-status Report
新規ロタウイルス分離株に基づく病原性および抗原性の解析
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22K07095
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
藤井 克樹 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (40518122)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロタウイルス / ウイルス分離 / MA104細胞 / 回転培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はまず、本研究代表者が保有している臨床検体(便)検体からロタウイルス(RV)の分離を試みた。細胞株はRVの培養実験で汎用されているMA104(MA104-WT)細胞と、STAT1およびIRF3の発現を抑制したMA104-N*V細胞(スタンフォード大学より分与)を使用し、培養方法は24 well plateによる静置培養と培養チューブによる回転培養を行い、これらの条件で分離の効率を比較した。臨床検体はDS-1-like G1P[8]、DS-1-like G3P[8]、AU-1-like G3P[9]、G9P[8] (lineage 3)、G9P[8] (lineage 6)を用いた。結果的に、ウイルスの分離効率の順番は、MA104-WT(静置培養)<MA104-WT(回転培養)≦MA104-N*V(静置培養)<MA104-N*V(回転培養)であり、MA104-N*V(回転培養)の条件ではいずれのウイルス株も分離に成功した。特にAU-1-like G3P[9]は分離効率が非常に高く、どの条件でも2継代目から明らかな細胞障害効果(CPE)が見られた。プラークアッセイを実施したところ、MA104-N*V 細胞はMA104-WT細胞と比較して10倍~2000倍多くCPEが見られ、その差は株によって大きく異なっていた。従って、ウイルス量の測定に関してプラーク数で定量する方法は相応しくないと考えられた。また、他の細胞株の利用可能性を探るためVero、HT-29、Caco-2、CV-1、293T細胞を用いてWa株の増殖効率を比較したが、MA104細胞より増殖効率の良い細胞は無かった。ここまでの実験から、RVの分離や増殖にはMA104-N*V(回転培養)の条件が最適であることが判明したため、今後、他の遺伝子型のRV株分離にはこの条件で行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、動物由来のRVは比較的容易に分離可能であり、代表的な株は世界中の研究室で利用されるようになっているが、ヒトRVに関しては、分離は容易ではなく、回転培養を行う、サル初代腎細胞を使用するなど、特殊な条件でなければ成功しないと考えられている。そこで本研究ではまず、ヒトRVの効率的な分離条件を探り、MA104-N*V細胞を用いた回転培養という好条件に辿り着いた。従って、今後はより効率良くヒトRVの分離を進められると考えられる。この成果は研究1年目としては非常に順調な滑り出しであったと言える。今後はこの条件で多くのウイルス株を分離して、流行株の多くを網羅できるようなウイルス株ライブラリの確立を目指す。それと共に、各ウイルス株について増殖効率、感染効率、細胞障害性等の病原性の評価を行い、ウイルス株ごとの性質を比較する予定である。これは当初の予定とおおむね同等以上の進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、ヒトRVの効率的な分離条件であるMA104-N*V細胞を用いた回転培養という条件を見い出した。今後はこの条件を用いて他の遺伝子型のRV株についても分離を進める予定である。予定としてはWa-like G1P[8]、G1P[8]-E2、G2P[4]、Wa-like G3P[8]、G8P[8]、G12P[8]、G9P[8]-E2の各株の分離を試みる予定である。特にWa-like G1P[8]とG2P[4]は複数のクラスタのウイルス株が流行しているため、可能であれば複数の株の分離を試みる。 また、初年度の研究により、ヒトRVは株によって細胞障害性に大きな差があり、プラーク数によるウイルス量の測定は望ましくないことが判明した。従って、ヒトRVの場合はウイルス量の定量には細胞障害性が現れにくいMA104-WT細胞を用いた蛍光抗体法を採用することが現実的であると考えられる。従って、次年度以降はRV定量法としての蛍光抗体法の確立を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
年度末前後に論文投稿費等が発生する可能性があると考えられたため、初年度の研究費は必要最低限の使用に留めるよう節約した。実際、初年度はウイルス分離条件の検討に集中していたため、研究費は多く使用せずに済んだ。論文投稿は次年度始めに行う予定である。次年度以降は、当初予定していなかった抗体によるウイルス検出法の確立を目指すため、抗体の購入費用等が多く発生する。そのため、初年度に節約した研究費を抗体の購入費用等に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Changes in the distribution of genotype constellations of rotavirus strains after rotavirus vaccine introduction in Asian and African countries2022
Author(s)
Yen Hai Doan, Nobuhiro Takemae, Toshihiko Suzuki Francis Ekow Dennis3, George Enyimah Armah, Takako Utsumi, Ikuo Shoji, Laura Navika Yamani, Okayama University, Manta Chawla-Sarkar, Tomoichiro Oka, Yoshiki Fujii, Hiroyuki Shimizu, Masamichi Muramatsu, Tsutomu Kageyama, Kazuhiko Katayama
Organizer
第69回日本ウイルス学会学術集会
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