2023 Fiscal Year Research-status Report
リソソームCa2+恒常性維持を介したT細胞老化制御機構の解明
Project/Area Number |
22K07121
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 淳平 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (20734239)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | T細胞老化 / オートファジー / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、早期に細胞老化の形質が誘導されるMenin欠損CD8 T細胞において、リソソーム内カルシウムイオン(Ca2+)の放出障害がオートファジーの減弱を引き起こす可能性を見出している。本年度は、Menin欠損CD8 T細胞のリソソームの機能・状態について中心に解析した。RNA-seq解析の結果から、リソソームCa2+チャネルの遺伝子発現は、野生型とMenin欠損CD8 T細胞の間で大きな差は見られなかった。リソソーム内の加水分解酵素やプロトンポンプに関わる遺伝子発現は、Menin欠損CD8 T細胞で増加する傾向にある一方で、一部の分解酵素の遺伝子発現はMenin欠損CD8 T細胞で著しく低下した。リソソーム状態・機能についてバイオイメージング解析を実施した結果、肥大化及び膜損傷するリソソームが野生型に比べMenin欠損CD8 T細胞で有意に増加することを見出した。一方で、リソソーム内pHは、野生型とMenin欠損CD8 T細胞で大きな差はなかった。これらの結果から、Menin欠損CD8 T細胞において、リソソーム形態の異常やリソソーム分解系の機能障害も生じており、これはリソソーム内pH非依存的である考えられる。また、Ca2+チャネルの遺伝子発現に差がないことから、Menin欠損CD8 T細胞で生じるCa2+の放出障害は放出機能の低下によって引き起こされる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Meninのリソソーム状態・機能に与える影響について中心に検討した。はじめに、リソソーム関連遺伝の発現についてRNA-seq解析を実施した結果、リソソームCa2+チャネルの遺伝子発現に野生型とMenin欠損CD8 T細胞で有意な差は認められなかった。一方で、Menin欠損CD8 T細胞ではリソソーム関連遺伝子の発現は、野生型にくらべ増加する傾向にあった。次に、リソソーム状態・機能についてバイオイメージング法を用いて解析した。その結果、野生型に比べMenin欠損CD8 T細胞では、肥大化するリソソームの数が増加するとともにリソソーム膜の損傷マーカーであるGalectin-3の集積がMenin欠損CD8 T細胞のリソソーム上で有意に増加した。一方で、リソソーム内pHは、野生型とMenin欠損CD8 T細胞で大きな差はなかった。次にリソソーム関連遺伝の発現についてRNA-seq解析を実施した結果、リソソームCa2+チャネルの遺伝子発現に野生型とMenin欠損CD8 T細胞で有意な差は認められなかった。一方で、Menin欠損CD8 T細胞ではリソソーム関連遺伝子の発現は、野生型にくらべ増加する傾向にあったが、一部の加水分解酵素の発現が有意に減少することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、リソソームCa2+放出やリソソーム状態・機能におけるMeninの役割について解析を実施する予定である。これまでのin vitroの解析において、リソソームCa2+の放出障害を回復させることでT細胞老化を部分的に抑制可能であることから、リソソームチャネルアゴニスト処理CD8 T細胞、Ca2+チャネルノックアウトCD8 T細胞をマウスに養子移入することで、記憶T細胞形成におけるリソソーム内Ca2+の役割についても検討する予定である。
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