2023 Fiscal Year Research-status Report
大腸前がん病変におけるSpheroid増殖能の意義とメカニズムの解明
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22K07149
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 敦 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (20569610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (10342990)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸管状腺腫 / オルガノイド培養 / スフェロイド増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸ポリープの切除組織を用いてヒト管状腺腫に由来するオルガノイド培養を作製し、単細胞に遊離・培養してspheroid増殖能を評価した結果、管状腺腫由来オルガノイドは大小のspheroidを形成する病変(dual-pattern, d-pattern)と小さいspheroidのみを形成する病変(small-pattern, s-pattern)とに分かれた。一方で大腸がん由来オルガノイドはd-patternを、正常大腸上皮組織に由来するオルガノイドはs-patternを示した。D-patternとs-patternを示す腺腫細胞の間でSoft agarコロニー形成能に差を認めなかったが、TP53ノックアウトによりd-patternを示す腺腫細胞においてコロニー形成能が有意に亢進した。これらの結果から管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid増殖能の幅(d-pattern)の獲得が、悪性化に関与する可能性が考えられた。Spheroid増殖能に関与する因子を検討したところ、全エクソン解析ではd-patternとs-patternを規定する遺伝子変異は認めなかったが、マイクロアレイによる遺伝子発現解析ではd-patternを示すオルガノイドではs-patternを示すオルガノイドと比較して遺伝子Aの発現が亢進していた。次にオルガノイドに遺伝子Aを過剰発現あるいはノックダウンすると、前者ではs-patternからd-patternに、後者ではd-patternからs-patternにそれぞれ変化することが分かった。また患者腺腫組織の免疫染色では遺伝子Aの蛋白発現はNC比やKi-67 indexと相関していた。これらの結果から、遺伝子Aの発現が管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid増殖能を規定し、大腸発癌における悪性化に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに当初の計画で予定していた50病変を越える管状腺腫からのオルガノイド培養を作製し、単細胞培養によるspheroid形成能・増殖能の評価を行った。また研究計画に従って、一部のサンプルを対象として全エクソン解析やマイクロアレイによる発現解析を実施した。さらにオルガノイドにおける遺伝子発現解析や遺伝子過剰発現・ノックダウンによるspheroid形成能・増殖能の影響の評価、spheroid形成能や遺伝子発現と腺腫細胞の悪性化との関連についての検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は作製したヒト由来オルガノイドを用いたin vitro実験を進め、大腸管状腺腫由来オルガノイドにおけるspheroid形成能・増殖能の意義と、spheroid増殖能の獲得に関与するメカニズムの解明を推進する。
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Causes of Carryover |
2023年度は網羅的遺伝子解析を実施したサンプル数が計画より少なくなったこともあり当初の見込み額と執行額が異なったが、2024年度には前年度の研究費も含めて、研究計画に従って研究を進めていく。
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