2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on immune evasion strategy and mechanism of the promotion of carcinogenesis of HTLV-1-infected cells
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22K07172
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中畑 新吾 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (80437938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 成人T細胞白血病(ATL) |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT 細胞白血病ウイルス1 型(HTLV-1)キャリアの数%が成人T細胞白血病(ATL)を発症するが、HTLV-1感染T細胞がクローン増殖へと移行する宿主環境因子については明らかでない。一部のキャリアでは感染防御免疫能の減弱により日和見感染を合併し、慢性炎症状態が活発になることから、日和見感染の併発は発症危険因子の一つと推測される。我々は、この慢性炎症を引き起こす宿主環境因子として、体内で最大の共生生物である腸内細菌叢に注目している。今回、HTLV-1キャリアおよびATL患者の便由来の腸内細菌の16S rRNAシークエンス解析およびメタゲノム解析から、特定の腸内細菌群がハイリスクHTLV-1キャリアやATL患者で変動しており、腫瘍量等と正に相関する細菌群が存在することを見出した。さらに、メタゲノム情報に基づいた機能遺伝子の解析から、ATL患者においてエンリッチされる腸内代謝経路を同定した。この代謝経路のうち、ハイリスクキャリアやATL患者で増加する腸内細菌の代謝産物がHTLV-1感染T細胞株およびATL細胞株の増殖を有意に促進することを見出した。この代謝物は、細胞の酸化ストレスを増加させることや、酸化ストレスの刺激ががん遺伝子として機能するHTLV-1 /Taxの発現を誘導することが報告されており、これらの量の変化がATLの発症や進行を制御するコファクターとなりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究でHTLV-1感染リンパ球と腸内細菌叢との相互作用のメカニズムの一端が解明され、特異的腸内細菌叢変化に伴うATL発症機構への関与が示唆された。これらの知見は宿主と病原体・日和見感染の相互作用を踏まえた包括的ATL発症機構の仮説を支持するものであり、概ね順調と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、HTLV-1感染リンパ球と腸内細菌叢との腸管内相互作用の解明、特異的腸内細菌叢変化に伴うHTLV-1感染リンパ球の増殖促進機構とATL発症機構への関与の証明が達成された。そこで次に、HTLV-1感染細胞による免疫撹乱機構を解明し、HTLV-1/ATL細胞の新たな免疫逃避機構の仕組みを明らかにする。
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