2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on immune evasion strategy and mechanism of the promotion of carcinogenesis of HTLV-1-infected cells
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22K07172
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中畑 新吾 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 教授 (80437938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病(ATL) |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染が原因で起こるCD4陽性の成熟T細胞性腫瘍である。ATL患者は極めて予後不良であり、日和見感染症や高カルシウム血症を高頻度に合併する。HTLV-1がコードする発がん因子Taxは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の標的となり、HTLV-1感染T細胞の増殖を抑制する。しかし、約半数のATL症例ではTaxの発現が損失し、CTL応答が減弱する。また、ATLでは免疫関連分子の異常が報告されており、ATLの発がん過程における宿主免疫応答の異常の関与が推察される。今回、HTLV-1感染による免疫調節分子への影響を検討した。T細胞受容体(TCR)はウイルスやがん等の抗原認識を担うが、HTLV-1感染細胞株やATL細胞株ではTCRの発現が定常的に低下していた。次に、各種免疫関連分子の発現を調べたところ、HTLV-1感染細胞株やATL細胞株では、T細胞活性化マーカーの発現が見られ、また、TCRの補助受容体であるCD3の発現が低下していた。つまり、HTLV-1の持続感染によって、感染したT細胞の機能が損なわれることを示唆した。さらに、既報にあるように、ATL細胞株においてT細胞疲弊マーカーPD-1のリガンドであるPD-L1の発現上昇がみられた。T細胞疲弊は、ATL患者の病態に密接に関わる可能性があり、今後、HTLV-1+/ATL細胞によるT細胞疲弊機構に着目し、ATLの発がん過程や病態における免疫異常の関与を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究結果からHTLV-1感染によって損なわれるT細胞シグナルあるいは免疫調節機構が示唆された。特に、T細胞疲弊は、HTLV-1感染細胞やATL細胞の免疫回避において重要な役割を担っている可能性を示唆する。これらの知見は、宿主とHTLV-1・日和見感染の相互作用を踏まえた包括的ATL発症機構の一端を裏付けるものであることから、概ね順調と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、HTLV-1感染リンパ球と腸内細菌叢との相互作用が明らかになり、さらに、特異的腸内細菌叢変化に伴うHTLV-1感染・ATL細胞の増殖促進機構が示唆された。ATLの発がん過程において、宿主免疫の撹乱は重要な促進因子となりうる可能性があり、今後、宿主とHTLV-1・日和見感染の相互作用を踏まえたATL発症機構の全体像を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、HTLV-1感染による免疫撹乱機構に関する解析を行った。予定していたヒト検体を用いた試験を次年度に実施する。また、未使用分の経費は、次年度のin vitro解析に充てる予定である。
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