2022 Fiscal Year Research-status Report
新規がん治療法の開発をめざしたp53との合成致死に関与する遺伝子群の探索
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22K07173
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
時野 隆至 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40202197)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | がん抑制遺伝子 / p53 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,Long non-coding RNA(lncRNA)ががんに重要な役割を果たすことが多くの研究により明らかにされている.そこで,大腸がんに関与するlncRNAを探索するために,TCGAデータセットにおいて発現解析および生存率解析によるlncRNAのスクリーニングを行った.その結果,大腸がんではlncACp53(仮称)の発現が正常組織と比較して有意に増加しており,その高発現は予後不良と相関していることに明らかにした.lncACp53をノックダウンすると,大腸がん細胞の細胞増殖が抑制され,アポトーシスが促進されることが分かった.lncACp53は主に核内画分に局在し,lncRNAの一般的な局在と一致した.これらの結果は,lncACp53がlncRNAとして機能していることを示唆している. 次に,lncACp53ノックダウンによる発現差異遺伝子を網羅的に調べるため,HCT116細胞においてRNAシークエンスを実施した.その結果,p53の標的遺伝子であるp21の発現が有意に上昇し,いくつかのp53標的のアポトーシス関連遺伝子の発現も変化していることが確認された.興味深いことに,lncACp53ノックダウンは,p53を変異させたDLD1細胞やp53をノックアウトしたHCT116細胞においても,これらのアポトーシス関連遺伝子の発現を変化させた.これらの結果は,lncACp53がp53依存的かつ独立的にこれらのアポトーシス関連遺伝子の発現を修飾していることを示唆した.以上のことから,lncACp53は,細胞増殖の促進およびアポトーシスの抑制により大腸がんの進行に寄与しており,これらのlncRNAは有用な治療ターゲットとなる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,p53の活性化に関与する長鎖非コードRNA (long non-coding RNA; lncRNA) を探索した.TCGA (The Cancer Genome Atlas)のがんゲノムデータを利用して,正常大腸上皮細胞と比較して大腸がん細胞で高発現し,かつ高発現群で予後不良と相関するlncRNAを10個同定した.このうちの1つのlncRNAに注目し,正常型p53遺伝子をもつ大腸がん細胞株HCT116(p53+/+)においてこのlncRNAをノックダウンし,次にRNAシーケンス (RNA-seq) により発現変動遺伝子を網羅的に解析した. その結果,コントロールHCT116細胞と比較してこのlncRNAノックダウンHCT116細胞で,p53の代表的な標的遺伝子遺伝子CDKN1A(p21タンパク質をコード)の発現が最も有意に上昇していた.そこで,第16番染色体に位置するこの長鎖非コードRNAをlnc53AC(仮称)と名付けた.p53遺伝子をノックアウトしたHCT116(p53-/-)細胞ではCDKN1A遺伝子の発現上昇は見られず,lnc53ACはp53依存的にCDKN1A遺伝子の転写活性化することを確認した.ボルケーノプロット分析とウエスタンブロット解析により,lnc53ACノックダウンはp53遺伝子を翻訳レベルあるいは翻訳後修飾に影響を及ぼすことから,lnc53AC高発現はp53活性阻害することがわかった
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,(1)lnc53AC欠乏がp53を活性化する分子レベルの機序を解明する(翻訳レベルあるいは翻訳後修飾に及ぼす影響を探索する)(2)lnc53AC欠乏後のp53の標的選択性の特徴を詳細に解析する. このlnc53ACのように,大腸がん細胞で高発現し,かつ高発現群で予後不良と相関する長鎖非コードRNA遺伝子の同定は,がんの予後予測および分子標的治療薬の開発に発展できることが期待できる.
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Causes of Carryover |
概ね順調に進んでいるが,研究補助員や大学院生がコロナ感染や濃厚接触者として出勤・登校制限になった期間があったため,一部研究計画に遅れが生じた.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Multiomics identifies the link between intratumor steatosis and the exhausted tumor immune microenvironment in hepatocellular carcinoma2022
Author(s)
Murai H, Kodama T, Maesaka K, Tange S, Motooka D, Suzuki Y, Shigematsu Y, Inamura K, Mise Y, Saiura A, Ono Y, Takahashi Y, Kawasaki Y, Iino S, Kobayashi S, Idogawa M, Tokino Takashi, Hashidate-Yoshida T, Shindou H, Miyazaki M,Imai Y,Tanaka S,Mita E,Ohkawa K,Hikita H,Sakamori R,Tatsumi T,Eguchi H,Morii E,Takehara T.
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Journal Title
Hepatology
Volume: 77
Pages: 77~91
DOI
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