2022 Fiscal Year Research-status Report
膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を亢進させる新たな分子機構の解明
Project/Area Number |
22K07178
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (90469966)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 膵臓癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
仮我々はこれまでに、様々な癌において高発現する転写因子ZIC5を見出した。本研究では、膵臓癌の悪性度と関連する転写因子であるZIC5が制御する遺伝子の解析を行い、『膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を亢進させている新たな分子機構を解明』する。 ZIC5 mRNA発現が全く検出されなかった症例 (ZIC5陰性)と比較すると、ZIC5陽性膵臓癌症例の生存率は有意に低く、ZIC5が膵臓癌の進展と関連していることが示唆された。3種類の膵臓癌細胞株において、ZIC5を発現抑制したところ、全ての細胞株においてアポトーシスが誘導され、ゲムシタビンによる細胞死誘導率も増加した。これらのことから、ZIC5は膵臓癌細胞の生存を促し、抗がん剤に対する感受性の低下を引き起こしていると考えられる。 ZIC5により発現制御をうける遺伝子の網羅的探索のため、RNA-Seq解析を行った。ZIC5を発現抑制した膵臓癌細胞において、発現変動する遺伝子群を同定し、この中から、ヒト膵臓癌組織において、ZIC5と発現が相関する遺伝子を同定した。さらに、非癌部と比較し、膵臓癌部で発現が高い遺伝子を抽出した。さらに重要遺伝子を絞り込むため、臨床データを用いた生存分析を行い、発現亢進が予後不良と関連する遺伝子を抽出した。 このようにして同定された遺伝子(以下、候補遺伝子とよぶ)は、膵臓癌細胞においてZIC5により発現制御をうけ、膵臓癌組織で高発現し、ZIC5と発現が相関する遺伝子であるため、ZIC5が膵臓癌組織において主に発現調節に関与している可能性が高いと考えられる。得られた候補遺伝子について、定量的PCRを行い、ZIC5の発現抑制により発現が低下するもの、過剰発現によって発現が亢進するものを複数同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ZIC5により発現制御をうける遺伝子の網羅的探索のため、RNA-Seq解析を行った。ZIC5を発現抑制した膵臓癌細胞において、発現変動する遺伝子群を同定し、この中から、ヒト膵臓癌組織において、ZIC5と発現が相関する遺伝子を同定した。さらに、非癌部と比較し、膵臓癌部で発現が高い遺伝子を抽出した。さらに重要遺伝子を絞り込むため、臨床データを用いた生存分析を行い、発現亢進が予後不良と関連する遺伝子を抽出した。 このようにして同定された遺伝子(以下、候補遺伝子とよぶ)は、膵臓癌細胞においてZIC5により発現制御をうけ、膵臓癌組織で高発現し、ZIC5と発現が相関する遺伝子であるため、ZIC5が膵臓癌組織において主に発現調節に関与している可能性が高いと考えられる。得られた候補遺伝子について、定量的PCRを行い、ZIC5の発現抑制により発現が低下するもの、過剰発現によって発現が亢進するものを複数同定した。これらの中には、既に膵臓癌の悪性化と関連することが報告されているものが複数存在したが、膵臓癌との関連が報告されていないものもあった。また、創薬標的になりやすい酵素活性をもつタンパク質をコードする遺伝子も複数同定されており、膵臓癌の新たな生存機構の解明と治療標的の同定に十分有望なものが同定されてきている。また、当初予定になかったGSEA解析によって重要な生物学的現象が同定されてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
膵臓癌の新たな生存機構の解明と治療標的の同定に有望な遺伝子が複数同定されているため、これらの機能解析を行う。複数の膵臓癌細胞において、発現抑制、または安定過剰発現を施し、膵臓癌細胞の生存や抗がん剤感受性について試験する。キナーゼであれば、キナーゼ活性中心に変異を入れて影響を調査する。膜受容体や分泌因子であった場合、阻害抗体や阻害ペプチドの作製を行い、阻害の影響を調査する。また、どのようなシグナル経路に作用するか検証を行う。ZIC5の下流因子としての重要性も検証する。 上記の解析により、膵臓癌の生存や抗がん剤耐性に重要であることが示されたタンパク質や因子について、マウス生体内腫瘍の生存における重要性を試験する。ヒト膵臓癌細胞を免疫不全マウスに移植(皮下または同所)した担癌マウスまたは膵臓癌発症モデルマウス(KPCマウス)を使用する。同定されたタンパク質の阻害薬や阻害抗体が既にあるものについてはその阻害剤を投与し、腫瘍増殖や転移が抑制できるか、抗がん剤と併用することで腫瘍縮小効果が増大するかを試験する。阻害法が確立されていないタンパク質に関しては、誘導性shRNA導入細胞を用いて検証を行う。または、アンチセンスオリゴの投与により阻害を試みる。必要に応じて、阻害抗体の作製、阻害ペプチドの探索、阻害化合物の探索を行う。並行して、ZIC5タンパク質の機能を阻害する化合物の開発を現在進めているため、ZIC5を標的とする治療薬シードについても同時に検証を行う。 これらの解析により、ZIC5またはZIC5が制御する因子の中から、膵臓癌の生存や抗がん剤耐性を阻害するための治療標的分子が同定されることが期待される。
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Causes of Carryover |
計画が順調に進み、一つの有望な下流因子について重点的に検証を行った。また、既に膵臓癌の進展と関連していることが報告されているタンパク質をコードする遺伝子が多く同定されたことから、ヒト膵臓癌組織を用いた免疫染色が必要ない候補因子が多くあった。ヌードマウスの値上がりや試薬価格の値上がりのため、今後多くの実験の費用がかさむことから、次年度以降に有効活用する。
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Research Products
(2 results)