2022 Fiscal Year Research-status Report
大腸上皮の分化指標に基づく大腸がん予後予測新規因子の解明
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22K07187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三好 弘之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30362479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 誠 公益財団法人田附興風会, 医学研究所, 所長 (70281714)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸がん / スフェロイド / 幹細胞 / 分化 / マーカー遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
・正常大腸上皮細胞における細胞型特異的因子の同定を行なった。以下の条件で培養したヒト正常大腸スフェロイドからRNAを抽出した。1) L-WRN培地+DMSO (対照群)、2) L-WRN培地+DAPT、3) L-WRN培地+NECA、4) 分化培地+DMSO、5) 分化培地+DAPT、6) 分化培地+NECA。各群3株のヒト正常大腸上皮スフェロイドを用いて独立に実験を行い、計18サンプルのRNAを用いてRNA-seq解析を行なった。得られたシークエンスデータから遺伝子発現プロファイルを作成し、iDEP2およびTCC-GUIを用いてDifferentially expressed gene (DEG)解析を行った。これにより、各群に特異的に発現する遺伝子を抽出した。 ・正常上皮の解析によって得られたDEGリストを用いて約120株の患者由来大腸がん幹細胞スフェロイドのクラスタリング解析を行ったところ、正常大腸上皮の分化指標に沿って大腸がんが分類できることがわかった。多くの大腸がん幹細胞スフェロイドの遺伝子プロファイルは条件3)と類似しており、この条件で特異的に発現する遺伝子が大腸がんの悪性化に関わっていることが示唆された。これらの遺伝子についてTCGAデータベースとの照合により患者予後との相関を検索し、機能的にがんの悪性化に関わると予想される有力候補を同定した。 ・大腸と同様の解析を胃で行うため、胃正常上皮スフェロイドおよび胃がん幹細胞スフェロイドの樹立を行なった。培養法の改良により、樹立成功率は約90%近くに改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したRNA-seq解析を行い、DEG解析を完了した。培養法の改良により、スフェロイド株間の差がほとんどない良質の発現プロファイルを得ることに成功した。また、大腸がんの悪性化に関わると予想される分化指標因子を多数同定しており、現在それらの機能解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
・次年度は、細胞型特異的因子による患者由来大腸がんスフェロイドの分類と予後予測マーカーの同定およびその機能解析を行う予定である。当該年度に選定した悪性化候補遺伝子の機能解析を行い、予後予測マーカーとして利用できる遺伝子を同定する。具体的には、レンチウイルスによる遺伝子導入か、 CRISPR/CAS9による遺伝子破壊を行った大腸がんスフェロイドを作出する。これらの遺伝子操作株を用いて in vitroで増殖試験、生存試験、創傷治癒試験、および細胞浸潤試験等を行い、遺伝子導入した細胞が悪性化の形質を獲得または喪失したかどうかを確認する。さらに、これらのスフェロイドを免疫不全マウス(nudeマウスまたはNSGマウス)の大腸粘膜下に同所移植し、in vivoでの浸潤能、転移能に対する導入遺伝子の影響を調べる。 ・胃正常上皮および胃がんについても同様の解析を行う。
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Causes of Carryover |
RNA-seq解析の委託先を学内のコアファシリティに変更し、委託業務の一部を自ら行なったことにより経費を節減した。昨今の経済情勢により研究資材および光熱費の高騰が続いていることから、次年度使用額は当初計画分との差額に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)