2022 Fiscal Year Research-status Report
加齢性疾患克服に向けた漸進型の老化細胞除去療法の確立
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22K07189
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
脇田 将裕 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (70794668)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞老化 / セノリティックドラッグ |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性疾患の発症原因の1つとして細胞老化を起こした老化細胞が注目されており、老化細胞の選択的除去法(セノセラピー)が様々なグループから報告されている。老化細胞の選択的除去薬剤はセノリティックドラッグと呼称され、我々はBRD4を標的分子とするARV825がセノリティックドラッグであることを見出していた。しかし、ARV825をはじめ、既報のセノリティックドラッグは老化細胞を完全に除去する能力はなく、生き残った老化細胞の特徴をRNA-seq解析で調べたところ、炎症に関与する分子の発現上昇が認められた。そのため、セノリティックドラッグ処理後に生き残る老化細胞がセノリティックドラッグによる加齢性疾患の治療効果を減弱させる可能性があるため、老化細胞をより効率良く除去する方法の開発を目指した。 以前の研究からARV825による老化細胞除去メカニズムとしてオートファジーの関与を見出していた。そこで、より詳細な細胞死誘導メカニズムを明らかにすることで老化細胞の弱点に迫ることとした。老化細胞にARV825を処理した際に生じるオートファジーは、実はオートリソソームが分解されず残存していた。実際にARV825処理後のリソソーム内pHの酸性化減弱が原因の1つであることを見出した。さらに、電顕解析などからオートリソソーム内にミトコンドリア蓄積が観察され、ミトコンドリア膜電位も低下していたことから異常ミトコンドリアの蓄積がROS産生を通じてARV825による老化細胞の細胞死誘導に関与する可能性を明らかにした。実際にARV825処理後に生き残った老化細胞のミトコンドリアは膜電位が回復していたことから、ミトコンドリアを標的とすることでより効率良く老化細胞を除去できることを想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARV825による老化細胞除去のメカニズム解析から、老化細胞を効率良く除去するための標的としてミトコンドリアに絞りこむことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアの損傷修復に関与する遺伝子をノックダウンした老化細胞にARV825を処理すると、より効率良く老化細胞を死滅可能となることが明らかとなった。そこで、ミトコンドリアを標的する方法について化合物などを用いて検討している。効率の良い老化細胞の新規除去法を見出した後、加齢性疾患モデルへの実施を計画しており、動物モデルを現在いくつか検討している。例えばApcΔ14マウスにて生じる大腸腫瘍は老化細胞の関与を通じて促進することを見出しており、本マウスモデルなどに新規老化細胞除去法を検討する予定である。
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Research Products
(7 results)