2022 Fiscal Year Research-status Report
肺がんにおけるエピジェネティックスを介した薬剤耐性変異獲得メカニズムの解明
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22K07199
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
瀬戸 陽介 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 研究員 (50738614)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / 肺がん / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がん患者の約30%を占めるEGFR活性型変異陽性肺がんや3~5%ほどのALK融合遺伝子陽性肺がんの治療において、EGFRやALKを標的とした分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は劇的な腫瘍縮小と生存期間の延長をもたらしてきた。しかしながら、治療数年ほどでT790M(EGFR)やG1202R(ALK)などの薬剤耐性変異が高頻度に出現することが臨床上大きな問題となっている。本研究では、EGFR活性型変異陽性肺がんやALK融合遺伝子陽性肺がんに対するEGFR-TKIやALK-TKI治療の過程で、高頻度に出現する薬剤耐性変異がどのように出現するか、その分子メカニズムを解明することを目的としている。これまでに、T790M耐性変異の出現にはDNAメチル化や脱アミノ化酵素の働きが関与している可能性が示唆されているが、T790M以外の耐性変異の出現メカニズムはほとんど分かっていない。そこで、本研究ではまずEGFR-TKIやALK-TKI処理によってどのようなエピジェネティックなDNAの構造変化がEGFR活性型変異陽性肺がんやALK融合遺伝子陽性肺がん細胞において引き起こされるのか、DNAのメチル化パターンを調べた。今年度は特に、Oxford nanopore sequencerを用いたロングリードデータからDNAのメチル化を検出する系の確立に努め、がん細胞サンプルからゲノムワイドにDNAのメチル化を検出することが可能となった。これまでの結果から、複数のEGFR活性型変異陽性肺がんにおいて共通してEGFRのT790M変異サイトで高いDNAのメチル化が起こっていることを明らかとした。現在、ALK融合遺伝子陽性肺がん細胞に対しても同様に薬剤処理によるゲノムワイドなDNAのメチル化パターンの変化を調べているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新たにOxford nanopore sequencerを用いたロングリードデータからDNAのメチル化を検出する系を確立することができた。これまでに、複数のEGFR活性型変異陽性肺がんにおいて共通してEGFRのT790M変異サイトで高いDNAのメチル化が起こっていることを明らかとした。さらに、ALK融合遺伝子陽性肺がん細胞についてもロングリードデータが得られているため、現在その解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はDNAのメチル化パターンがEGFR-TKIやALK-TKI処理によりどのように変動するのかを明らかにし、薬剤耐性変異が生じるDNA領域に特徴的なパターンが存在するのかを明らかとする。また、ゲノムワイドな変異解析やRNA-seqなども合わせて行うことでエピジェネティックなゲノム構造の変化領域と変異領域に相関があるかどうかを調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行に伴い、参加する予定であった国際学会への参加が出来なくなったため。
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