2022 Fiscal Year Research-status Report
Feed-forward regulatory regulation driven by tumor specific endothelial cells in pathophysiology of leukemia
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22K07206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 聡 東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (60226834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 浩一 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任先任准教授 (10360116)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | がん微小環境 / 血管新生 / シグナル伝達 / 分子標的治療 / アンジオクライン因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者らは、本研究で、白血病や多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、ないしは悪性黒色腫等の腫瘍性疾患を、生体諸臓器が有する特異的血管内皮(臓器特異的血管内皮)によって構成される生体恒常性維持機構―アンジオクラインシステムの破綻と捉え、臓器特異的血管内皮から供給されるアンジオクライン因子の発現と産生異常に伴う、腫瘍・血管内皮間のフィードフォワ―ド型の腫瘍増殖、疾患病態制御機構の解明を主な目的とする。今年度の研究で、代表者らは、悪性黒色腫や血液腫瘍の疾患モデル生物や生体内外の実験系で、血液線維素溶解系(線溶系)に属し、セリンプロテアーゼである組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)が、その受容体low density lipoprotein related protein-1(LRP-1)を通じ、tPA/LRP-1のシグナル伝達により、癌抑制遺伝子、転写因子p53の発現と癌細胞のアポトーシス抑制作用、さらにプラスミノーゲンの活性化に伴うプラスミンの生成による、メタロプロテアーゼの活性化が腫瘍増殖、転移を有意に促進すること、そしてプラスミンの活性中心型阻害剤YO-2により、複数の癌種の増殖の抑制作用を確認した。加えて、tPAによるメタロプロテアーゼの活性化は、TNFスーパーファミリーに属するCD40リガンド(CD40L)の細胞外ドメイン分泌を促進することが示唆されており、今年度、代表者らはアンジオクライン因子であるCD40の核酸医薬製剤によるノックダウン、CD40/CD40Lシグナル阻害による移植片対宿主病の疾患モデルの有意な予後の改善、さらにCOVID-19の臨床検体における、血管内皮障害に伴う線溶亢進と炎症性サイトカイン分泌促進機構の存在についても報告した。これらの統合的研究成果は、さらなる血液・腫瘍性疾患の病態解明に加え、新規分子標的療法と早期診断法への臨床応用が期待できる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに、代表者らは、本研究の第一の目的である白血病や多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、ないしは悪性黒色腫等の腫瘍増殖、あるいはストレス応答中の生体諸臓器に属する臓器特異的血管内皮の性状変化と機能の解明を進め、内皮より産生されるアンジオクライン因子、tPAやPAI-1、一部のメタロプロテアーゼ、CD40の量や活性、種類を同定、またこれらに伴って形成される病変、例えば異常血管新生や癌の広範な浸潤や転移、加えてニッチ構成の変化、マクロファージの浸潤や癌抑制遺伝子、転写因子p53の発現誘導、受容体とシグナル連関、ニッチ形成の機序を考察し、研究成果については、年度内に論文報告した。第二の目的である臓器特異的血管内皮と他系統細胞との間のアンジオクラインシグナルを通じた相互作用を含めたフィードフォワード型の白血病、腫瘍病態制御機構の解明についても、腫瘍、血管内皮と造血系、間葉系細胞の分離あるいは共培養等を通じて、可能な範囲で進め、一部の研究成果について論文報告した。また腫瘍のみならず、全身性炎症、いわゆるサイトカインストーム症候群の疾患モデルを使用して、酵素活性阻害剤や核酸医薬によるアンジオクライン因子に対する分子標的療法の有効性を提示することを通じて、血管内皮障害を端緒としたこれらの病態形成機構等を明らかにしたことも、血管内皮細胞の機能解明の点では、統合的に理解が進んだものと考えられる。血管内皮から産生されるアンジオクライン因子の一部が腫瘍細胞からも供給されることにより、これが、腫瘍増殖に伴った異常血管形成に関与していること、さらに、代表者らは、異常血管と正常血管の両方から供給されるアンジオクライン因子により、腫瘍増殖が加速するとの仮説の検証についても有用なデータを得ており、アンジオクラインシステムの全容解明、腫瘍性疾患の診断技術、新しい分子療法開発の基盤形成は着実に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、代表者らが、これまでの研究を通じて確立した疾患モデル生物とヒト・マウス由来細胞、細胞株を使用した生体内外の実験系で、白血病や多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等の造血器腫瘍や悪性黒色腫、さらには、その発症機構について不明な点の多い、カヘキシアや播種性血管内凝固症候群、血球貪食症候群等のいわゆるサイトカインストーム症候群に属するこれらの癌関連疾患の発症、全身性炎症性疾患病態への進展、病勢変化に応じ、経時的な臓器―臓器特異的血管内皮細胞のアンジオクライン因子の発現、産生状況、血中濃度変化、さらにこれに関連した転写因子の活性化、アンジオクラインシグナルを通じた、腫瘍を含む他系統細胞との相互作用、またフローサイトメーターを駆使し、疾患モデルの臓器組織からソーティングにより採取した血管内皮系細胞の細胞表面マーカーによる性状解析、また次世代シーケンサーによる包括的遺伝子解析を施行し、特に代表者が仮説としたフィードフォワード型の腫瘍増殖機構、アンジオクライン因子を介した正常血管内皮と腫瘍増殖に伴う異常血管内皮間の相互作用の存在の確認を通じ、仮説の検証を進める。臨床検体を使用した研究については、血液あるいは骨髄液あるいは細胞スメア等、採取検体の状況に応じて、造血器腫瘍、癌の治療前後の腫瘍細胞や造血系細胞群におけるアンジオクライン因子発現・産生と重症度、治療状況との関連性を精査し、腫瘍増殖に伴うストレス、疾患・病勢応答性の臓器特異的血管内皮の性状と機能変化を明らかにし、各種疾患病態を制御するアンジオクラインシステムの全体像を明らかにしていく。また、これらアンジオクライン因子の一部をバイオマーカーとした病勢、重症度の掌握、疾患の重症化や予後の予測、さらには、これらを標的とした新しい分子療法開発の可能性を検討、評価するところまでを今後の研究計画の範疇とする。
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Research Products
(13 results)