2022 Fiscal Year Research-status Report
染色体外環状DNAによるがん悪性化進展機構の解明と治療標的としての可能性
Project/Area Number |
22K07210
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
芳野 聖子 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (40793617)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | eccDNA / CRISPRスクリーニング / がんゲノム / 統合解析 / スーパーエンハンサー / 薬剤感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞には染色体外環状DNA(eccDNA)が広範に存在することが報告され、がんの増殖や不均一性との関連が示唆されている。 本計画では、eccDNAを有する細胞株の生存にどの遺伝子が選択的に必要で、どの薬剤に対して感受性が選択的に高いかを明らかにすることを目標として、まず、eccDNAを有するがん細胞における生存に必須な遺伝子のプロファイリングおよび薬剤感受性プロファイリングの統合解析を実施した。具体的には、数百種のがん細胞株の全ゲノムシーケンス(WGS)データから各細胞株についてeccDNAのカタログを作成し、このデータを遺伝子発現プロファイリング(20,000遺伝子)、ゲノムワイドshRNAライブラリースクリーニング(20,000遺伝子)、ゲノムワイドCRISPRライブラリースクリーニング(20,000遺伝子)、薬剤感受性プロファイリング(4,500薬剤)と紐づける統合解析を実施した。全ゲノムシーケンスによるeccDNAの解析とCRISPRライブラリを用いたがん遺伝子スクリーニングを統合することにより、結果として、eccDNAを有するがん細胞において生存に必須な遺伝子(A、B)を同定した。続いて、実験的な検証として、生存必須遺伝子AをCRISPR-Cas9システムあるいは関連する阻害剤で抑制した結果、がん細胞株の増殖が有意に抑制されることが明らかになった。さらに、解析から明らかになった、eccDNAの複数の染色体融合点(break point)をダイレクトシークエンスにより確認し、FISH解析からもeccDNAの存在を確かめることができた。 加えて、eccDNAを有するがん細胞に対するより普遍的な治療標的を探索した結果、細胞周期や有糸分裂を制御する分子Cの阻害剤が有望であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん細胞のeccDNAの有無・種類(eccDNAに含まれるがん遺伝子やエンハンサー)に応じて、どの遺伝子が生存に選択的に必要で、どの薬剤に対して感受性が選択的に高いか、今年度の目標である解析によるスクリーニングが概ね完了し、着実に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、得られたeccDNAに関連した標的遺伝子・薬剤性について、eccDNAを有するがん細胞株(5~10程度)、eccDNAを有さないがん細胞株(5~10程度)に拡張して、shRNA・CRISPRによる機能抑制、薬剤投与、標的遺伝子を抑制する化合物探索などの分子生物学的アプローチにより、その治療標的としての妥当性をin vitro及びin vivoで検証する。さらに、研究の進展に伴って、シングルセル解析も検討する予定である。
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Research Products
(4 results)