2022 Fiscal Year Research-status Report
炎症性がん関連線維芽細胞に必須な新規転写因子の同定とその機能解析
Project/Area Number |
22K07215
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山下 和成 順天堂大学, 医学部, 助教 (70589481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折茂 彰 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (70275866)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 乳癌 / 癌微小環境 / 転写因子 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは、その90%以上が上皮細胞由来であると言われるが、腫瘍の中には癌細胞だけではなく、線維芽細胞・免疫細胞・血管などが含まれており、これらは癌微小環境を形成する。腫瘍内に存在する線維芽細胞は癌関連線維芽細胞(Cancer-Associated Fibroblasts; CAFs)と呼ばれ、癌細胞の増殖・転移や抗癌剤への抵抗性を促進することが示されている。CAFsは正常な線維芽細胞と比べて遺伝子発現が変化しており、癌細胞に有利な微小環境を構築する特徴的な性質を発揮している。これら理由から、線維芽細胞がCAFsに変化するメカニズムを明らかにすることは、CAFsを標的とする癌治療法を開発する上でも重要である。 CAFsの中にもいくつかの細胞種(サブタイプ)が存在していることがわかっており、平滑筋アクチン (α-SMA)が陽性で細胞外基質を分泌して組織を硬化させる平滑筋様CAFsや、炎症性サイトカインを分泌する炎症性CAFsが主なサブタイプである。炎症性CAFsは、IL-1やCCL2などの炎症性サイトカインを分泌することで、癌細胞の増殖や腫瘍免疫抑制に働いている。 研究代表者らはヒト乳癌CAFsに高発現する転写因子に着目し、上記マーカー遺伝子の発現を指標にしてsiRNAスクリーニングを行った。その結果、ある転写因子(TF-S)がIL-1やCCL2の発現に必要であることがわかった。 CAFsでTF-Sをノックダウンし、RNA-seqとGSEA解析を行ったところ、TF-SのノックダウンでNF-kBシグナルが低下していることが示唆された。また、TF-Sの高発現を行ったところ、IL-1やCCL2の発現上昇が認められたことから、TF-SはNF-kBシグナルの上流因子として働くことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TF-Sの抗体作製が予定より遅れている。この抗原蛋白質は、大腸菌発現系での精製が難しいようである。現在、いくつかの抗原を作製している。また、TF-Sの高発現も発現量が低い。現在、レンチウイルス発現ベクターをいくつか試している。
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Strategy for Future Research Activity |
高発現するTF-SにはHAタグが付加してあるので、HA抗体でChIPを行う予定である。また、良質な抗体が作製できた場合はこれを用いる。さらに、培養癌細胞とCAFsを混合して免疫不全マウス皮下に共移植すると、癌細胞と正常線維芽細胞を混合して共移植した場合よりも腫瘍の成長が早く、また、転移能も高くなることがわかっている(マウス共移植モデル)。CAFsのTF-SをshRNAの安定発現によりノックダウンして癌細胞と共移植し、腫瘍の成長や転移能が低下するか評価する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は少額であり、ほぼ計画通りに使用している。
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Research Products
(1 results)