2022 Fiscal Year Research-status Report
リンパネットワークのメカノバイオ解析に基づくリンパ節転移機序の解明と診断技術開発
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22K07270
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高野 真由美 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (60806298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 成史 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (50624912)
権田 幸祐 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80375435)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リンパ節転移 / リンパ管 / CT / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
がん転移の早期診断や根治に重要であるセンチネルリンパ節診断法は、偽陰性診断の抑制する方法として、蛍光ナノ粒子を利用したセンチネルリンパ節の高感度検出に注力されてきた。この方法は現法の感度を高めているに過ぎず、がん存在下でのリンパネットワークの変化を考慮していなかった。本研究では、「原発巣とリンパ節を繋ぐリンパ管の構造変化」と「リンパ節転移の進行に伴うリンパ節組織内の圧力変化」に注目したメカノバイオ手法でリンパ節転移機序を解析し、これまでとは異なる視点からリンパ節転移の偽陰性診断を抑制する技術開発を目指す。 2022年度はリンパ節転移の指標の一つとしてリンパ管の構造変化に着目し、リンパ流増加によるリンパ管構造変化の解析を行った。そして、モデルマウスのリンパ管の形態をX線CTを用いて三次元的に可視化し、さらに組織学的解析によりリンパ管内皮細胞の応答性について細胞レベルで調べることに成功した。マウスの足背にがん細胞を移植したリンパ節転移モデルマウスを作製し、足背に金ナノ粒子造影剤を注入してリンパ管の構造変化をX線CTで可視化したところ、リンパ管は拡張および蛇行していることがわかった。さらに可視化したリンパ管を摘出後、リンパ管の病理組織解析を行った。その結果、リンパ流方向と周方向においてリンパ管内皮細胞の増殖率に違いがあることがわかった。さらに、得られた数値を使ってリンパ管構造をシミュレーションし、リンパ管内皮細胞の増殖には極性がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メカノバイオシステムによるリンパネットワーク変化の機序解明のために、2022年度は研究課題であった「リンパ流増加が誘導するリンパ管構造変化の解析」を遂行し、おおむね計画通り進めることができた。リンパ節転移モデルマウスを作製し、金ナノ粒子造影剤を用いてリンパ管をX線CTで三次元的に可視化・解析した。さらに、可視化したリンパ管を摘出し、病理組織解析を行い、得られたデータからリンパ管構造をシミュレーションすることに成功した。がん細胞の転移能の有無による差異についての検討は継続して行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はリンパ節転移によるリンパ管構造の違いを可視化し、リンパ節転移の有無で構造変化の程度が異なることを明らかにした。2023年度は引き続きリンパ管構造変化の解析を進め、がん細胞の特性、腫瘍径、リンパ節転移の程度等との関連について検討し、がん転移との相関の真偽について詳細に解析する。また、リンパネットワークが変化する仕組みを解明するために、リンパ節の組織圧の測定を行い、その後さらにリンパ流速の測定を行う。そして、これらの知見を応用したより高精度なリンパ節転移診断法を確立することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究室にすでにあった試薬で実験を行うことができたため、予定よりも費用が少なく済んだ。使用しなかった分は次年度以降に多くの費用を必要とする動物実験や組織圧測定用消耗品に使用する予定である。
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