2023 Fiscal Year Research-status Report
がんの根治を目指したがん幹細胞を対象とした分子標的治療薬開発のための基礎的検討
Project/Area Number |
22K07287
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
長塩 亮 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (40618568)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 義男 北里大学, 理学部, 教授 (60265733)
朽津 有紀 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70878272)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 肺がん / がん幹細胞 / 診断マーカー / 膜タンパク質 / CDH12 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは依然として予後不良であり、がん組織中に存在するがん幹細胞が原因の1つであると考えられている。本研究ではがん幹細胞を検出するための優れたマーカーを探索するため、がん幹細胞様細胞を用いたショットガン解析により、膜タンパク質の網羅的な解析を行った。肺腺がん由来のMPPAC細胞を用いた解析では、がん幹細胞様細胞であるMPPAC-4F細胞にのみ同定されたタンパク質が71個同定され、細胞膜局在、正常組織での発現が限局、幹細胞関連の報告がある分子という条件でがん幹細胞との関連の深いタンパク質を含む11種に絞り込んだ。また、同じく肺腺がん細胞であるA549を用いて同様の解析を行った結果、A549-4F細胞のみで同定されたタンパク質は1357個であった。2種のがん幹細胞様細胞にのみ共通して同定されたタンパク質は13種であった。これらのタンパク質に対する抗体を用いて、肺がん組織を対象とした免疫染色を行った。それらの1つであるCDH12について報告する。CDH12発現は正常の肺胞上皮や気管支上皮では認められず、一方、腫瘍細胞では細胞膜局在と細胞質顆粒状の発現が認められ、扁平上皮がんよりも腺がんで有意に高発現していた。肺腺がんにおけるCDH12の細胞膜発現は病理学的ステージの進行、肺内転移あり、及びリンパ管侵襲ありと有意に相関していた。細胞質顆粒状の発現においても胸膜浸潤あり、リンパ管侵襲あり、血管侵襲ありと有意な相関を示した。肺腺がん患者の予後とCDH12発現との関連においては、がん特異的生存期間でCDH12低発現群に比して、高発現群で有意に予後不良であった。CDH12 mRNA発現と患者の予後との関連をKaplan-Meier Plotterを用いて評価した結果、CDH12 mRNA低発現群に比して高発現群でOS、FPともに有意に予後不良であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に行う予定であったもう1種類のがん幹細胞様細胞による解析を本年度実施し、2種類のがん幹細胞様細胞を用いた比較検討を行った。比較により同定された分子の発現についてはそれぞれ抗体を購入し、肺がん組織を対象とした免疫染色を行っており、マーカーとして有望な結果を示す分子も獲得されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
各分子の発現と臨床病理学的因子との関連性の評価を進めており、それらが済み次第、培養細胞を用いた機能解析、並びに血清診断マーカーとしての有用性の評価を実施していく予定である。血清診断マーカーとしての評価は肺腺がん細胞の培養上清中への当該タンパク質の分泌を確認後、肺がん患者血清を用いたELISA法にて実施する。また、培養細胞を用いた機能解析ではsiRNAを用いた発現抑制実験などを行うことでがん細胞の増殖能や遊走能、浸潤能への影響を確認し、将来的な治療標的としての妥当性について評価する。
|
Causes of Carryover |
2023年度に購入すべき物品は全て購入したため、21146円は次年度に繰り越した。
|