2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K07317
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
正本 和人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60455384)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 神経血管連関 / 脳微小循環 / 大脳毛細血管 / 実験動物 / 二光子顕微鏡 / ビックデータ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験動物の行動学習を評価するための実験系を構築した。予備的データではあるが、実験時の温度環境(環境温度の低下)が学習機能に影響することを確認し、3件の国内学会ならびに2件の国際学会での論文発表を行った。さらに本実験モデルにおいて、神経血管連関の評価を行い、脳血管応答の変化量に関しては正常時と比べて有意な差は得られなかったが、脳血管反応のダイナミクスが環境温度によって変化することを見出した。つぎに、神経血管連関を抑制するモデルを構築し、大脳毛細血管の応答性を評価した。二光子顕微鏡で撮像した脳毛細血管画像を3次元再構成し、詳細に画像計測したところ脳毛細血管の収縮応答は安静時の脳毛細血管の状態に依存することがわかった(Suzuki et al., JCBFM in press)。さらに脳毛細血管の収縮による大脳微小循環への影響について調べて国際誌(IF:7.0)に論文発表を行った(Niizawa et al., JCBFM 2023)。さらに脳毛細血管の収縮による抵抗の増大によって血球の流れが有意に低下し、特に静脈側の脳微小循環において顕著に流れが抑制されることを明らかにした(論文投稿中)。一方、脳病態の応用研究として、正常ラットにおける軽度の脱水時の脳微小循環動態、ならびに高脂血症モデルマウスにおける脳毛細血管内皮細胞表面における糖鎖の分布について検討を進めた。その結果、体重減少率5%程度の軽度の脱水においても脳微小循環における血球分配が不均質になり、流れが停滞する毛細血管が出現することが明らかとなった。本成果に関してそれぞれ7件の国内学会ならびに国際学会での論文発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際誌への2件の論文成果ならびに1件査読中の成果を得ることができたので、当初の予定通りおおむね順調に進展していると判断した。特に画像解析の部分において大きな進展があり、顕微鏡画像より蛍光輝度の不均質性を修正したうえでピクセル輝度のクラスタリングにより、形態情報を細胞体領域ならびに突起部および背景へと自動で分離する手法を構築した。一般的に二光子顕微鏡画像では深さや画像平面内におけるシグナルノイズ比の不均質性が定量解析において克服すべき課題となるが、新規に最適化した画像輝度の空間周波数に基づいた補正ならびにバンドパスフィルタの適用により、それぞれの形状を精度よく抽出が可能であることを確認した。特に細胞の突起部の解析については、細胞体重心の360度全方位における突起の分布を検出することで、突起部の空間配向性を評価することが可能となった。これまで2次元の細胞画像を扱う解析ソフトは市販化されているが、二光子の光軸方向における点広がり関数を考慮し正確に3次元形状を再構成し定量化するソフトウエアはなく、既存手法に対する本手法の優位性が確立された。本手法は、脳血管とミクログリアが相互に修飾される脳血管病態を評価する際にミクログリアの異常を検知する感度が向上すると期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
二光子顕微鏡法で撮像した顕微鏡画像は、撮像面内の平面方向に比べて光軸方向の分解能が乏しく、また撮像領域内を流れる血液中のヘモグロビンによる光の吸収効果を強く受けるため、画像平面内においてシグナルノイズ比が異なるという問題がある。このことによって1枚の画像を二値化し形状を抽出する際に、シグナルノイズ比に基づいた一定の閾値を平面内に適用することができないため、画像内のオブジェクト形状の定量評価を困難にする。そこで本研究室では、シグナル値に応じて二値化閾値を補正するアルゴリズムを採用し、画像計測を行っている。今後本実験計画で取り組む病態モデルでは、画像の質が劣化しシグナルノイズ比の低下が懸念されるため、これらの手法は病態画像に対して特に有用であると期待される。また病態モデルにおける神経血管連関の抑制メカニズムの解明に向けて、環境温度の低下が中枢の温度や脳神経活動にどのように影響するのか脳温と脳神経活動の機能イメージングを行い、明らかにする。さらに次年度以降、糖尿病や高脂血症モデル動物において、同様の計測システムを用いた脳微小循環ならびに神経血管連関と行動学習に関する評価実験を実施し、神経血管連関の抑制による認知機能低下のメカニズム解明と介入操作による治療効果について検討を進める。これらの研究成果に関して、既に3件の国際学会(組織における酸素輸送に関する国際会議ISOTT 2023 in Tokyo、世界脳循環代謝学会 Brain & BrainPET 2023、世界微小循環学会WCMic 2023)での論文発表を予定し、演題登録を行った。
|
Research Products
(22 results)