2023 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞とハイスループット測定によるヒト脳シナプス可塑性の直接解析
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22K07319
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田端 俊英 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (80303270)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シナプス / 可塑性 / ニューロン / ヒト / iPS細胞 / シナプス・オーガナイザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はヒト由来iPS細胞由来中枢ニューロンどうしでシナプスを形成させ、シナプスの特性を明らかにし、マウスなど他の動物種と異なる特性がヒト中枢ニューロンに備わるか否かを明らかにすることを目指している。上記の方法によって得たヒト中枢シナプス標本のシナプス形成・成熟過程をシナプス・オーガナイザー分子(PTPdelta)のマイクロエクソン選択パターンを指標として詳細に分析し、ヒト胎児の脳波の周波数に近い双極電流パルスを培地に通電することで、成熟したシナプスを形成することに成功した。この結果のduplicationをロットの異なるニューロンで試みた。新たに検査したロットの細胞は以前のロットより成熟型に近い選択パターンが刺激前から現出していることが分かった。成熟によってどのようなマイクロエクソン選択パターンに収斂していくかについては見通しがついたものの、通電刺激による選択パターンの変化についてはさらなるduplicationが必要である。ヒトではマイクロエクソンの選択パターンの違いは発達障害等につながることが知られており、ヒトとマウスの選択パターンの相違はヒト特有の学習機能の解明につながる可能性がある。したがって、シナプスを形成した単一ペアのニューロンからパッチクランプ測定によってシナプス伝達の様態を解析し、当該シナプス前ニューロンからmRNAを抽出してPTPdeltaのマイクロエクソン選択パターンとの相関を見ることは極めて重要である。細胞膜を破砕せず、長時間にわたって細胞内環境を温存した状態でパッチクランプ測定ができ、しかも高い確率で測定を成功させるために新しいグラミシジン穿孔パッチクランプ法を開発した。また、シナプス前ニューロンからはruptured-patchパッチクランプ法で細胞膜を破砕してmRNAを記録ピペット内に吸引する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト由来シナプスの形成過程のトランスクリプト分析によって、具体的なシナプス分子およびその遺伝子に焦点を絞って、ヒト特有のシナプス形成の分子機序の種特異性が示唆されるデータを得ることができた。また、極めて高い効率でシナプスの遺伝子―機能相関解析を行う方法論を確立することができた。 これらを踏まえて、次年度以降、ヒトと他の動物種の中枢シナプス可塑性の特性に相違があるか否か等について精密な遺伝子―機能相関解析が可能になったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト由来iPS細胞を中枢ニューロンに関してヒトPTPdeltaのマイクロエクソン選択パターンとそれに対する通電刺激の効果をさらにduplicationする。また、新規開発のグラミシジン穿孔パッチクランプ測定法と遺伝子回収法を駆使して、単一細胞レベルでマイクロエクソン選択パターンとシナプス機能の相関を調べる。さらに、マウス中枢ニューロンを標本として同様の遺伝子―機能相関を調べ、ヒト中枢シナプスが他の動物の中枢シナプスと比較する。
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