2023 Fiscal Year Research-status Report
小脳プルキンエ細胞による運動・非運動情報の符号化様式の解明
Project/Area Number |
22K07324
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
池添 貢司 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10596430)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は変化する内外環境に適応し意図した運動を行う。小脳のプルキンエ細胞の複雑スパイクは感覚運動情報を符号化し運動学習の基盤と考えられてきた。近年、報酬などの非運動情報も符号化していることが明らかになった。しかし、感覚運動情報と非運動情報が個々の細胞で統合されているかや、非運動情報の運動学習への寄与については不明である。本課題では、随意運動課題を行うマウスのプルキンエ細胞から2光子カルシウムイメージングと多点電極による計測を行い、複雑スパイクによる情報符号化様式と、その学習に伴う変化、変化における報酬の影響を明らかにする。 令和5年度は前年度から引き続き、自発レバー引き課題を行うマウスから2光子カルシウムイメージングで計測を行い、プルキンエ細胞の複雑スパイクとタスク関連情報や各行動パラメータとの関係を調べ、複雑スパイクによる運動情報と報酬情報の情報符号化様式を検討した。符号化モデルを用いた解析法を適用し、複雑スパイクがレバーの軌跡やリッキングに関係する運動情報とともに報酬に関係する情報が単一の細胞に収れんし、符号化されていることが明らかになった。また、皮質内で近接している細胞は似た情報を符号化しており集団を形成しており、集団の境界は明瞭であることが明らかになった。この結果については前年度から論文投稿中であったが、査読付きオープンアクセスジャーナルCommunications Biologyに掲載された。また、米国で行われた国際学会(Neuroscience 2023)で発表を行った。 また、歩行課題遂行中のマウス小脳から高密度多点電極による計測も行った。スパイク活動の相互相関解析から複雑スパイク、単純スパイク、プルキンエ細胞を同定した。複雑スパイクだけでなく単純スパイクやほかの細胞種における、情報符号化様式のより高い時間精度での解明やその学習に伴う変化を解析・検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、小脳のプルキンエ細胞における運動関連情報と報酬関連情報の統合が明らかになった。この結果については、査読付きオープンアクセス国際誌Communications Biologyに発表した。また、2023年11月には神経科学領域では世界最大規模の学会である、ワシントンDCで開催された北米神経科学会大会(Neuroscience 2023)で学会発表をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
このまま進める。 歩行課題遂行中のマウス小脳から高密度多点電極による計測を行い、感覚運動情報と非運動情報が個々の細胞での統合様式や、非運動情報の運動学習への寄与について検討を進める。計測したスパイク活動の相互相関解析から複雑スパイク、単純スパイク、プルキンエ細胞を同定する。プルキンエ細胞の複雑スパイクと単純スパイクだけでなく、スパイク活動が皮質内で計測された位置から他の細胞種の推定を行う。情報符号化様式のより高い時間精度での解明やその学習に伴う変化を各スパイク活動や細胞種、細胞の皮質内位置に関連して、解析・検討する。また、同時活動計測された細胞集団による情報の符号化様式についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度に米国で行われた学会に参加する際に、円安物価高による渡航費用の増加が見込まれたため、次年度から前倒し請求した。その分の残額が次年度使用額になっている。次年度使用額については、消耗品の物品購入費に充てる。
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