2023 Fiscal Year Research-status Report
シナプス接着因子の結合制御にみる社会性行動異常の共通した分子メカニズムの解明
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22K07333
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
柳下 楠 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70799189)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | テストステロン / ニューロリギン / ニューレキシン / シナプス接着分子 / 自閉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、男性ホルモンであるテストステロンと、神経細胞で重要なはたらきを行うシナプス接着因子とが自閉症を引き起こすメカニズムを明らかにするものである。 テストステロンは主要な男性ホルモンであり、母体の胎内で急速に濃度が高くなることで脳の男性化を引き起こすと考えられている。また、テストステロン濃度と自閉症の発症には、高い相関が示されているが、そのメカニズムは明らかになっていない。研究代表者は、テストステロンの発症リスクに関して、シナプス接着因子であるニューロリギンとニューレキシンの結合に干渉することが鍵となるという仮説を設定し、それを検証する。 まず本研究ではテストステロンがニューレキシンとニューロリギンとの結合へ干渉することを培養細胞系で明らかにした。更に、胎内での一過的なテストステロン上昇を再現するために、妊娠マウスにテストステロンを投与し、生まれた仔においてニューロリギンとニューレキシンとの結合が阻害されていることを示した。 今年度はテストステロン投与により、脳内でニューロリギンおよびニューレキシンの発現や局在、またシナプス形成に変化があるかどうか、ウエスタンブロット法や免疫組織化学法によって検証するための各種条件検討を行った。また、テストステロン投与により、神経細胞の投射に異常が起こるかどうかを新たな方法を用いて検討するため、染色方法や固定方法を工夫した。来年度は、この条件検討の成果を用いて、テストステロン投与群と非投与群における仔の脳形成の異常を検出することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験における条件検討に時間を費やしたが、そのかいあって条件が整ってきたので、実験を進める準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、テストステロンを投与して生まれた仔における自閉症様の行動異常が、ニューレキシン・ニューロリギン結合を阻害することによってシナプスの形成に異常が生じたために起こる現象かどうかを検証する。 テストステロン投与仔群とコントロール群において、テストステロンおよびニューレキシンやニューロリギン、またシナプスマーカーとなるタンパク質がどのように発現しているかを、生まれた仔の脳における免疫組織化学およびウエスタンブロット法によって検証する。 また、蛍光ニューロントレーサーを用いて、テストステロン投与仔群とコントロール群における神経回路形成に異常があるかどうか検証する。
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Causes of Carryover |
効率的に実験が進行したため、当初計上した予算よりも少額で遂行できたため。また、次年度に動物実験および免疫組織化学法、ニューロントレーサーの購入に使用するために計上する。
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