2022 Fiscal Year Research-status Report
過去の細胞状態の記録による神経炎症ミクログリアの時空間的解析
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22K07347
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永田 健一 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (50587798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉見 一人 東京大学, 医科学研究所, 講師 (50709813)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経炎症 / ミクログリア / シングルセルRNA-seq / ゲノム編集 / Creマウス / 神経損傷 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
神経炎症は神経変性疾患や神経損傷に付随する免疫応答である。細胞の遺伝子発現は、炎症の惹起から収束までで大きく変化するため、特定のマーカーだけで炎症に関わる細胞の動態を追跡するのは困難である。そこで、本研究では過去に神経炎症を経験した細胞を継続的に標識できるマウスを作出し、神経炎症のプロセスを理解することを目指した。事前に実施していたシングルセルRNA-seqで同定した神経炎症マーカーCxcl10をCre挿入の標的とした。効率よく長鎖の配列をノックインするため、研究分担者である吉見一人博士が開発のCombi-CRISPR法(Hum Genet 2021 PMID: 32617796)を採用した。ジェノタイピングPCR、シークエンスによりCreの配列挿入を確認後、得られたFounderマウスを繁殖させ、Cre依存的に蛍光タンパクを継続的に発現するレポーターマウスと交配した。作製したマウスの片側舌下神経を損傷し、一定期間をおいて、脳の凍結切片を作製した。起始核である舌下神経核を観察したところ、蛍光タンパクの発現には非損傷側・損傷側間で明らかな差が認められた。炎症収束後にも、損傷側における蛍光タンパクの発現は維持されていたことから、神経炎症という過去のイベントの痕跡を組織中に保持するマウス系統が得られたと考えている。 また、追加のシングルセルRNA-seqを実施するなどして、神経炎症の惹起から収束までの各ステージのマーカーを探索した。ミクログリアにおいては、炎症前、炎症時、炎症後とステージごとのユニークな分子マーカーが見つかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲノム編集技術を用いたマウス作製が順調に進み、2023年度に実施を予定していた組織学的解析の一部を既に実施済みである。また、Cre-loxPシステムに基づいたマウスツールは、期待していた通りに、神経炎症の痕跡を組織中に保持していた。
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Strategy for Future Research Activity |
神経損傷後に炎症に応答する細胞集団は、複数いると想定されている。今回のCxcl10-Creマウスにより、どのような細胞タイプに神経炎症の痕跡が認められるのか、より詳細に解析していく必要がある。組織切片上で、Cre依存性の蛍光タンパクの発現とどの細胞タイプマーカーが重なるのか、多重免疫染色により評価していく。得られた結果が、神経損傷後の経過時間により変わるか否かも検証する。また、手持ちのシングルセルRNA-seqのデータセットの解析を継続する。アストロサイト、オリゴデンドロサイトについても、神経炎症の前後でどのように下位集団が出現するかを抽出していく。情報解析後は、実際に存在するかを組織切片上で検証する。本研究で着目したCxcl10はケモカインの一種であり、末梢由来の免疫細胞を損傷舌下神経核内に誘因していると考えられる。CCR2 RFPマウスを用いて免疫細胞の浸潤は確認しているものの、抗体を併用するなどして、どのような細胞集団がどのタイミングで浸潤するかを定性的・定量的に解析していく。
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Causes of Carryover |
Creマウスの作製が予想以上に順調に進んだため、予定していた実験の一部を実施することなく済んだ。生じた次年度使用額を使って、追加の組織学的実験を実施する予定である。
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