2022 Fiscal Year Research-status Report
脊髄ミクログリアと脳神経の相互作用をシナプスレベルで解析する
Project/Area Number |
22K07353
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
齊藤 秀俊 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 准教授 (90444794)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 脊髄神経回路 / 神経回路標識 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢からの感覚情報が初めに通過する脊髄の感覚伝達回路と,精神心理状態が統合する脳との感覚調節回路において、脳から脊髄への直接入力に着目し,脳ー脊髄神経回路の同定と,脊髄の痛覚伝達回路を直接制御する脳部位情報や神経特性の解明を試みた. 本年度では、まず神経終末から逆行性に感染し,Cre組み換え酵素を発現する改変型アデノ随伴ウイルスベクターを作成した.既報にて同定済みの改変型アデノ随伴ウイルスカプシド蛋白を構成成分とするウイルスベクターをCre発現カセットを導入した形で作成し,Rosa26遺伝子座にloxp配列に挟まれた翻訳停止配列を含むtdTomato発現カセットを持つ,Ai9マウスに投与した.投与はL5腰髄に0.5 μLの微量注入を行い,想定通りの導入範囲であることを固定組織サンプルのtdTomato陽性細胞を観察することで確認した.投与後3週間で脳組織を採取し,すべての脳領域を含む厚さ50 μmの冠状面薄切切片を取得し,蛍光顕微鏡での観察を行った.脳切片の解析では,複数の脳部位でレポーターの発現が観察され,細胞体、樹状突起,軸索の形態を観察することが可能であった.解析の結果,本実験手法にて標識可能で脊髄に投射を持つ脳領域は,前帯状回,一次体性感覚野,視床下室傍核,視床下部外側部,中脳水道周囲灰白質,subparafascicular nucleus,Edinger-Westphal核,赤核,橋網様体,青斑核,小脳中位核,吻側延髄腹内側部,孤束核であることを見出した.レポーターマウスを用いた実験系では投与部位近傍での局所回路も標識されることから,下行性神経の脊髄内での神経終末を区別することが困難である.そこでレポーターマウスから得られた脳部位情報をもとに,ベクター投与部位2点間をつなぐ神経のみを標識する実験系を構築し,各脳部位から脊髄内への投射様式の解析を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
標識神経回路の同定は当初計画通り進展しているが、市場の影響により予算条件に合うベクター作成機器の選定に遅れが出たため、第二年度に使用するベクター作成の効率化に影響が残っている。解析対象脳領域を絞ることで対応する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りレポーターマウスを用いての網羅的な解析データを得ることができた。13脳領域が、第二年度の回路選択的標識の解析対象として見出されたが、すべてを解析対象とするには資材が不足するため、標識細胞数の多い脳部位に絞って回路選択的な標識を行っていく。解析項目としては、当初計画通りに進行している。
|
Causes of Carryover |
メーカー都合により納品されない薬品が生じたこと、購入予定備品の決定が遅れたことによる一部実験の遅れから差額が生じた。次年度の物品購入費に充当する。
|