2022 Fiscal Year Research-status Report
組織保護作用を制御するミトコンドリアダイナミクスに着眼した脳再生メカニズムの解明
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22K07355
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宮元 伸和 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10365661)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 慢性虚血負荷 / cell-cell interaction |
Outline of Annual Research Achievements |
筋肉内でラベルされた緑色のシグナルを持つミトコンドリアを脳、心臓、肺、脾臓、肝臓等、各種臓器でみとめた。移動手段を考察するため、全血を採取、遠心分離し評価したところ、赤血球、血清には認めず、buffy coat部(白血球、血小板の層)に緑のシグナルを確認した。次に全血にギムザ染色を行い、シグナルを確認したところ、緑のシグナルは血小板と共存していた。また、脳においては血管内皮、オリゴデンドロサイト前駆細胞、アストロサイトに認めた。このことから筋肉中で増加したミトコンドリアは血小板を介して各種臓器に移動していることが示唆された。 次に運動負荷による血小板中のミトコンドリア量の変化においては、筋肉内、血小板内のTOM20発現は運動負荷群で増加しており、ATP活性(ミトコンドリアの活性)も保たれていた。電子顕微鏡下においてもミトコンドリアは筋肉内、血小板内で増加している画像が得られた。 また、ミトコンドリアは病的条件下においては、活性酸素を発生する源ともなりうることがわかっている。そのため、疑似慢性虚血負荷における筋肉から抽出したミトコンドリアの細胞保護効果を検討した。疑似慢性虚血負荷(CoCl2添加)において、細胞の生存率(WST-8assey)はオリゴデンドロサイト、アストロサイドにおいて、ミトコンドリア投与による差を認めなかった。通常、アストロサイトは障害性(C3d陽性アストロサイト)に傾き、オリゴデンドロサイト前駆細胞の成熟が抑制されるが、ミトコンドリア投与は、虚血下においてもアストロサイトは保護的アストロサイト(S100A10陽性)のままで保つことができ、オリゴデンドロサイトの成熟が図れることが判明した。これらのことから、ミトコンドリア投与は、病的条件下においても、脳を構成する細胞の保護効果があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の状況はおおよそ実験計画通りに進行している。しかし、筋肉からどのような形で血小板にミトコンドリアが移動するのか、どのような機序で移動するのかという「機序の解明」には至っておらず詳細な評価が今後必要である。抗体による阻害実験も行っているが、短期的な効果しか得られず、結果は安定しなかった。そのため、今後はsiRNAを使用して方法を変え検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
動物レベルにおける運動負荷群の血小板による脳保護効果を確認するため、慢性脳虚血モデル、脳梗塞モデルに運動負荷群より作成した血小板を手術後3日目より週2回投与し効果を実証していく。さらには、投与した血小板中ミトコンドリアが病変部位に到達しているかを確認するため、血小板内ミトコンドリアをMitoBlight LT redにて染色し、血小板投与後24時間にて断頭し、IVIS(Vivo Imaging System) にて解析をおこない、投与した血小板中のミトコンドリアは病変部位に到達していることを確認していく。 さらには、運動負荷群血小板の白質保護効果を確認する。動物モデルの実験においては、血小板投与群で虚血性白質障害の進行抑制、Y-maze試験における認知機能の改善効果を実証する。また、細胞実験においてはアストロサイト、オリゴデンドロサイト系の疑似慢性虚血負荷にたいする細胞保護効果の実証していく。
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